『陰謀論のオシゴト』に隠されたサブリミナルメッセージ

 

 

作中に隠された差し込み画像

ある夕方ぼ~っと『陰謀論のオシゴト』2話を再生していて一瞬だけ実写っぽいものが映っていると気付いた。寝起きだったから見間違いかもしれないと思ったけど、調べてみると確かに1瞬だけど画像が差し込まれていた。他の回なども調べてみるとトレーラーと本編全てにサブリミナルメッセージが差し込まれているではないか!

 

注:以下には作中にメッセージの内容、探し方、画像のネタバレがあります

 

 

 

 

 

 

 

 

画像の探し方

シーズン1パート1のトレーラーには2:10に隠れメッセージが、シーズン1パート2のトレーラーには0:03にそれぞれ隠れ画像が入れられている。

 

本編には全て約7秒目に画像が差し込まれている。ここで黒い画面に白文字で表示されている’a netflix series’が白く塗りつぶされる。その後にジーッという音がして一瞬だけ画像が差し込まれている。1秒もたたないうちに画像が荒くなって本編が始まるので、再生速度を一番遅くすると確認しやすい。

画像は全て本編に関わりがある内容。既存の写真に制作陣が手を加えたり制作陣が描き下ろしたと思われる。

 

画像の内容

シーズン1トレーラー: 2:10に制作陣からのメッセージ。実際に掲載されている番号にかけた時に聞こえる音声がYoutubeにアップされている

https://www.youtube.com/shorts/tcSZICUVZwM

シーズン1パート2 トレーラー: 0:03に隠し画像。2人の者が怪しげな祭壇を前に闇の儀式を執り行っているイラスト。2000年7月15日午後10時。1時間3分11秒に渡り動画が撮影されているとわかる

 

訂正・補足:11話の画像と同じものが使われている。11話で画像は6つの秘密結社が集う”バーニングマン”スタイルの野外フェス、ボヘミアン・グローブの映像だとわかった。左下の年月日から過去のイベントの録画とわかる。映っている2人はローブの形からイルミナティの上層部ではない組織員かイベント参加者と思われる。

 

1話:大統領の首からワイヤーが出ている画像

2話:ホワイトハウスで任務にあたる3人のケネディ大統領の写真

3話:戦前のイェール大学の集合写真?

4話:ハリー・ハリソンという男性の架空の出会い系サイトのプロフィール、QRコード

追記:QRコードを読み込むと制作陣が作ったと思われるライトスワイプ(作中の出会い系サイト)の公式インスタアカウントに飛ばされる

5話:サングラスをかけた人間の左目をアップしたイラスト。青空に白煙を噴射しながら飛ぶ飛行機がサングラスに映っている

6話:岩場で泳ぐ巨大タコと3匹の原始人らしき生物。色目と背景の火山と船からすると北極か南極かもしれない

7話:制作陣が作ったと思われる何人かのパスポートのイラスト

8話:宇宙船内にいるバズ・オルドリンの写真に制作陣が書き加えたクラッパーボード(カチンコ)を持つ手

9話:コグニート社の機密文書。1998年1月16日に発行された以外は暗号で書かれていて読めない

10話:実写のロナルド・レーガンが頭に洗脳装置?を付けている画像。装置とビデオカメラは制作陣の手書き。ビデオカメラにProject jellybean Ronaldと表記

 

制作陣がどんな意図で画像を差し込んだかはわからない。でもまちがいなく『陰謀論のオシゴト』ファンを楽しませている。パート2もますます楽しみになってきた。

 

 

 

 

 

 

アウルハウス 考察 皇帝ベロスの正体

※『アウルハウス』シーズン1とアナ雪のネタバレを含みます

※  自由に書いてます

 

シーズン1の最後でようやく登場した皇帝ベロス。いまだに皇帝であることと性別以外は情報がほとんど明かされていない。朝ごはんに何を食べるのか、仮面の下でこっそり舟をこぐのか、マントの下は生まれたままの姿なのか、寝る時には何も着ないのか。全てが謎に包まれている。皇帝ベロスは一体何者だ?

 

謎だらけの皇帝ベロス

現地点でわかっている情報は少ない

・野蛮な魔法が野放しだったボイリング島に秩序をもたらした

・数百年にわたってボイリング島を統治している。

・カヴン制度に従う者には健康で文化的な生活を保障する一方、従わない者は1話のように牢屋に閉じ込めている。

 

かつては革命家で今は独裁者。驚くべき長寿の生き物で、裏と表の顔を使い分ける狡猾な性格。正体は何者でどんな経緯をたどってボイリング島を統べるようになったか。とあるファンタジー作品との関連性から謎多き皇帝の正体を推測してみた。

 

1.『オズの魔法使い』説

『アウルハウス』には古今東西のファンタジー作品のオマージュが盛り込まれている。アメリカで作られた作品である以上、昔からアメリカ人の誰もが1度は見たり読んだりする作品から影響を受けている可能性は高い。中でも最も有名なファンタジーの1つがライマン・フランク・ボームオズの魔法使い

 

『アウルハウス』と『オズの魔法使い』には共通点が多い。主人公のルースとドロシーはアメリカの地方で暮らしていた現代っ子(ドロシーの場合は書かれた当時の現代)の少女で、偶然の出来事によって異世界に足を踏み入れた。どちらも欠落を抱えた人間ではない仲間たちと一緒に冒険し、その世界の住人たちと触れ合う。

 

人間の少女と魔女と妖魔と筒状の鳥?

引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Really_Small_Problems/Gallery?file=Really_Small_Problems_-_075.png

 

『アウルハウス』はまだ物語が作られている途中だけど、ドロシーは冒険の終盤でエメラルド・シティの統治者「魔法使いオズ」が自分と同じアメリカから来た普通の人間と知った。

 

平凡な人間オズは気球に乗って異世界に迷い込み、機械の力で自分が魔法使いだと住民を信じ込ませてエメラルド・シティの統治者なる。もしアウルハウスが『オズの魔法使い』の影響を受けているなら、ベロスも我々と同じ世界から来た人間で自らを救世主と偽ることで皇帝の座を得たと考えられる。


さかのぼること数百年前。乗っていた気球が飛ばされたのかはわからないけど、何かしらの方法で魔界にやってきて人間界の機械をより強力な魔法に見せかけることでうまい具合に統治者となった。

 

イカサマが成功して異世界暮らしが長引く間に野心的になったのか、それとも元から傲慢な性格で支配者として君臨する野望を抱いていたのか。いずれにせよ飽きないのが不思議なくらい長い間ボイリング島を統治し続けている。

 

南の島へのバカンスを勧めたい

引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Agony_of_a_Witch/Gallery?file=Emperor.png

 

ベロスの杖も魔界に普及している杖よりデザインが機械的で、先端には使い魔の動物ではなく電球らしきものが付いている。オズが自分を大仰に見せる機械仕掛けでドロシーたちを迎えたように魔法が使えないのをごまかしているのかもしれない。

 

引用元:

https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Young_Blood,_Old_Souls/Gallery?file=Belos_Staff.jpg

 

魔力を誤魔化しているからベロスが人間とは限らない。現代の魔界に伝わっている供述「野蛮だった地に秩序をもたらした」から、ボイリング島内外出身の革命家や他の国の統治者の可能性もある。その場合には何者でどんな経緯で皇帝になったかを考えてみた。

 

2.ハンディキャップ説

ベロス自身が魔法を使えない魔界の住人かもしれない。片親が人間だった影響で魔法を産み出す臓器を作る遺伝子が受け継がれなかったのか。それとも両親は魔法使いだけど一種の突然変異による臓器の欠損か。いずれにせよ魔法を産み出す器官が生まれつきなかった。

 

魔法が使えないハンディキャップのせいであらゆる苦しみを味わうのは、全てにおいて魔法を使うのが大前提のボイリング島に恨みを抱く理由としては充分だと思う。コンプレックスをこじらせた青年が偶然の重なりによって権力者として担ぎ上げられ、元の権力者を殺害。そのまま統治者になるシナリオもあり得ないことはない。

 

非魔法使いが魔力を補うために蒸気や電気で動く機械を産み出し、魔法を使えるようにごまかしているのも説得力がある。

 

3.異国からの侵略者説

 

引用元:

https://frozen.fandom.com/wiki/Hans_Westergaard?file=Hans_stops_Elsa.png

アナ雪のハンスみたいにボイリング島の外の王国の皇太子だったりして。ボイリング島以外の島や大陸があって別の文明が栄えている可能性は充分にある。自分の国にいても王位どころかろくな地位すらもらえないから外国乗っ取りを計画。運よく企みが成功して統治者になった。

 

なんで世継ぎがいないのかといった疑問はあるけど、そこは不妊庶子が多かったのか単にもてなかったのだろう。

 

4.掟破り説

これまで上げたどの説も長寿を説明できない。ボイリング島の住人は普通の人間と寿命が変わらない。だとしたらあんなに長い間生きている理由は何か。

 

あくまで推測だけどファンタジーのお約束「○○してはいけない」を破ったのかもしれない。禁断の魔法に手を出す、場所に入る、物に触れるといったタブーを犯した罰として不老不死の呪いをかけられたと考えられる。

 

それ以外の理由としては不慮の事故でそうなったり、野心から不老不死を追求して薬によって寿命を延ばしていたり。すでに滅んだ長寿の種族の血が入っているなどいかにもファンタジー作品らしい理由かもしれない。

 

まとめ

2022年5月地点で放送されている回では皇帝ベロスは謎めいた存在のままだ。アメリカの古典的なファンタジーのオマージュなどあらゆる可能性があるけど、真相は仮面の下に隠されたままだ。

 

いずれにせよ正攻法ではないやり方で皇帝になったのは間違いない。ベロスが何者でどうやってボイリング島の統治者となったのか、物語が進めば明らかにされるだろう。

アウルハウス 考察 カヴン制度について その2

カヴン制度の背景とは?

 

 

皇帝ベロスは何を意図してカヴン制度を作ったのか。「魔女や妖魔たちが魔法を野放しにしていた野蛮な時代を終わらせ、ボイリング島に秩序をもたらすために使える魔法を制限した」はあくまで大衆に広まっている話。本当のところ皇帝が何をやったか明らかにされてない。

 

どんな社会制度にも必ず統治者の意図がある。カヴン制度を普及させたのにも皇帝ベロスの思惑があるはずだ。皇帝は何を考えてこの制度を作ったのか、その裏にある背景を推測してみた。

 

1.権力者の台頭を防ぐ

ベロスは50年前に野蛮な時代を終わらせた、という供述から彼が権力者であり侵略者でもある可能性があると確認できる。権力を持つ者にとって最も恐ろしいのは自分の地位を脅かす存在。自分より強い魔法使いが現れて欲しくないがために「野蛮な人たちを文明化する」口実で国民の魔法を制限するようになった。

 

 

引用元:

https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Agony_of_a_Witch/Gallery?file=Taught_magic.png

 

現にカヴン制度が浸透した現在の魔界では、カヴンに入団する際に施される印の影響で1人1分野の原則によって複数の分野の合わせ技を使える存在はほぼいない。つまり極端に富や魔法の力を持つ個人が現れる可能性が低くなる。

カヴン制度は富や権力の集中を防ぐことによって皇帝を脅かすほどの魔力と権力、財力を持った存在の台頭を防ぐ役割を果たしていると考えられる。

 

2.国民の不満を抱かせない

いくら新たな権力者が現れるのを防いだ所で、政治に不満を抱いた国民たちに反乱を起こされては元も子もない。強硬的な手段で反発を招くことなく国民を大人しくさせるには政治的無関心の状態にとどめる必要があった。

そこでカヴン所属を条件にパンと娯楽ならぬ教育と充実した生活を保障。従う者に現代の福祉国家でも実現できない理想の社会制度の恩恵を与えたのだ。

 

図書館など公共施設も充実している

引用元:

https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Bonesborough_Library/Gallery?file=S1_EP07_Bonesborough_Library_Interior_2.png

子供たちは幼~高に至るまで無償かつ質の高い教育が保証され、10代以降では専門の分野に特化して学ぶことを許される。卒業すれば自分の好きなことや得意なことに基づいて選んだカヴンに入団し、真面目に働いてさえいれば人並みの生活を普通に送れる給料をもらえる。

過度な受験戦争や階級闘争もなく、自分がやりたい仕事をやらざるを得ない上に低賃金に苦しむこともない。入団すれば事実上健康で文化的な生活を保障される現状に多くの人が満足し、今に至るまで皇帝の統治を認めている。

 

3.優秀な人材のリクルート

子供の頃からカヴン入団を意識させるのは皇帝にとっても利益がある。多くの魔法学校の生徒が卒業後にカヴンに入るという認識が共有されているため、カヴンの説明会などを定期的に開いて若者を集めやすい。集まった参加者たちの中から優れた魔法の才能を発揮する子を発掘できるかもしれない。

 

若い世代の育成のために城内のツアーも開催

引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Agony_of_a_Witch/Gallery?file=Shade.png

 

優秀な人材を発掘して皇帝直属やその下の9つのカヴンに入団させることで、才能がある者を自分の手中に囲い込める。そうすることで自分の右腕として使えるだけでなく、早くに印を腕に刻ませて自分に歯向かう可能性を減らせる。まさに一石二鳥のやり方だ。

 

まとめ

カヴン制度は市場の競争や権力者の台頭、限られた人への富の集中を防ぐことで皇帝ベロスの権力が脅かされる危険性を排除する仕組みだ。充実した社会制度によって国民が政治に無関心で統治に意を唱えないように仕向けることで、皇帝は自らの地位を維持しつつも己の思惑に気付かせないように企んでいる。何をやろうとしてるかわからないけど何かを考えているにちがいない。

 

 

 

アウルハウス 考察 カヴン制度について

 

 

いくつかのファンタジー作品に見られるようにアウルハウスにも魔法の分類や魔法使いを組み分け、何かしらの機関に所属させる制度がある。ボイリング島に普及した「カヴン制度」の概要や背景、人々に支持される理由を考察してみた。

 

1.カヴン制度とは

皇帝ベロスによって作られた魔法を分野ごとに分ける制度。各カヴンを象徴する色とtrackがあり、’特に優秀で皇帝に必要不可欠な役割を果たす魔法使い"Coven Head" または "Head Witch"によって率いられている。

 

最も権力が強いのは皇帝直属の「エンペラーズ・カヴン」。メジャーなカヴンはアボミネーション、吟遊詩人、魔法生物、建設、ヒーリング、イリュージョン、預言(占い師カヴンとも呼ばれる)、植物、ポーションの9つ。

 

代表的な9つのカヴン

引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Coven_System?file=Coven_System.png

 

著名なカヴンに所属することはステータス・シンボルであり、中でも「エンペラーズ・カヴン」に入団するとエリート扱いされる。9つのカヴンのトップ"Coven Head" や "Head Witch"は皇帝に直接仕えている。

 

その他にも多肉植物、陶芸、猫、スタイリスト、花、修理人、アーティスト、大型犬、小型猫、一番小さい猫、不機嫌、ディベート、歴史、まじない(いたずら)、ファッション、瞑想、食中植物、シェフ、水晶占い、散文、パン職人、円形の天窓、反応(魔法の反応を調べる?)、偶然(魔法の偶発性を調べる?)といったマイナージャンルのカヴンが多数存在する。

 

カヴンに入るのは全ての住民の義務で、未成年の魔法使いはメジャーな9つのカヴンのうちいずれか、または校長の許可が下りたらいくつかの分野を勉強することが奨励される。多くの人は魔法学校卒業後の17、18歳でカヴンに所属するが、優秀な生徒の中には在校時や未成年で入る魔法使いもいる。

 

一度カヴンに所属すると魔法の印を腕に刻まれ、エンペラーズ・カヴンの所属者を除き基本的な魔法以外はカヴンの専門分野に関係する魔法しか使えなくなる

 

引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Coven_System?file=S01E05_Covention_%2528132%2529.png

 

なおカヴンに所属しないのは不法行為とみなされ、強引にどこかに所属させられるか石化魔法の刑を受けることになる。

 

2.カヴン制度が作られた背景

物語が始まる50年前に皇帝ベロスが魔女や妖魔たちが魔法を野放しにしていた野蛮な時代を終結ボイリング島に秩序をもたらすために使える魔法を制限し、皇帝に使役するカヴン制度を設立。このシステムができる前の世界は混沌としていたため、大勢がこの制度に従った。以後カヴン制度は今日までボイリング島に定着し、毎年多くの若い魔法使いが加入している。

 

3.カヴン制度が支持される理由

中にはイーダみたいに自由でありながらも使える魔法を厳しく制限されるこの制度に反発する人もいる。それでも多数派の人に指示されているからには制約と同時にメリットも多い。

貧富の差が少ない世界

カヴン制度は1人1分野の魔法しか追及できないと厳格に決められている。従って個人が複数の分野の魔法を使って莫大な富や権力を得ることは難しい。中にはブライト家のように異なるカヴンに所属する夫婦が共同開発した兵器によって財産を得ている家もあるけどあくまで少数派。本編を見る限り極端に裕福な人は限られているし生活に困窮している人もいない。

 

平等な教育

ボイリング島に貧富の差が少ない一因として教育制度が充実しているのも挙げられる。イーダがお金を気にせずにルースを魔法学校に入学させられたことから、ヘキサイドは公立で学費が無償の可能性が高い。しかも幼稚園や保育園に当たる年齢から高校までのエスカレーター式で魔法が使えたらいつでも誰でも入学できる。

 

こんな学校にただで通えるのはうらやましい

引用元:

https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Hexside_School_of_Magic_and_Demonics?file=School.jpg

真面目に学校に通ってさえいれば最終学年でカヴンを選んで所属。著名なカヴンとそれ以外の上下はあるしどこに入るか迷う人もいるだろうけど、みんな魔法学校卒業→カヴン入団は変わらない。

 

がんばらなくてもいい社会制度

職業の貴賤もあまり見受けられない。確かに皇帝直属のカヴンやその下の9つカヴンに入るのはエリートの証とされる。だからといってみんながそこを目指す訳ではない。リリスみたいな優等生はいるしブライト家のように向上心が高い家庭もある。

 

その反面、自分が好きなこと、やりたいこと、得意なことを基準に選んでも生活していける。カヴンによる給料の差は確認できないけど、所属さえしていれば3K(汚い、臭い、給料が低い)の三拍子がそろった仕事に就くことはまずない。

 

カヴンに入りさえすればどこかの国と違って文字通り健康で文化的な生活が保障される。子供たちは質のいい教育を無償で受けられ、将来は好きなことや得意なことが仕事につながる。そこだけ見ると理想の世界すぎて何か裏があるのではないかと勘ぐってしまう。この制度は純粋な正義感によって作られた訳ではなさそうだ。

(その2に続く)

 

アウルハウス 5話 魔法団の大会 感想

あらすじ

ルースはウィローとガスに誘われてカヴン(魔法団)の大会に参加した。カヴンへの勧誘が行われる楽しいイベントだけど、イーダは乗り気ではない。中でも最高峰の皇帝カヴンを毛嫌いし、リーダーのリリスと何かある様子。

 

一方ルースはアミティと再会。ルースのせいで校長先生に叱られ散々な目に合ったとアミティは怒っている。キングに意地悪をしたことで怒ったルースはアミティに決闘を申し込んだ。ルースが負けたら魔法修行をやめる約束。決闘のことを知ったイーダはインチキをしてでも勝たせようとするが、ルースは乗り気ではない。

 

決闘が始まるとルースはそのことをアミティに伝えようとするが、その前にアミティ側もルール違反をしていたとイーダに暴かれる。初めから知らなかったアミティはショックでその場を立ち去り、姉妹は子供たちそっちのけで白熱したバトルを繰り広げる。

 

ルースはアミティの後を追いかけて謝る。今までの努力が水の泡だと悲しむアミティ。自分は魔女じゃないとみんなの前で証明しろと言ったが、魔法を使えないルースが別の形で魔法を練習していると知ったアミティは、努力を認めて決闘前に行った契りを解いた。

イーダも逃げ出してその場は丸く収まったかに見えたが、キキモラは部下のリリスに全力でイーダを捕らえるように命じたのだった。

 

新キャラ

リリス:イーダの姉。皇帝のカヴンの一員

 

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画像引用元:

https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Covention/Gallery?file=S01E05_Covention_-_37.png

 

 

 

キキモラリリスの上司。鏡に映って登場する

 

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画像引用元:

https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Covention/Gallery?file=S01E05_Covention_%2528689%2529.png

 

 

感想

魔法が大学の学科みたいに専門分野を選べるのはすごく楽しそう。10代で進路を決めないといけないのは少し早すぎるかもしれないけど、やりたいことが決まってる子は好きなことに集中できて役に立つ制度。もちろんデメリットもあって色々な分野を学ぶことはできない。この制度は皇帝ベロスの統治と何かしらの関係があるはず。

 

イーダの姉リリスが初登場。妹とは対照的に堅実な優等生タイプのエリートだけど姉妹が対面するとまぁ大人気ない。バトルシーン(または盛大な姉妹喧嘩)は魔法の使い方にそれぞれの性格が出ていてかっこよかった。

 

大人気ない2人と違って今回は子供の方が大人。よくアミティはルースが魔法に一生懸命なのを認めて許した。身勝手な理由で自分が積み上げた努力の成果を2回もめちゃくちゃにされて、キングのカップケーキを潰すだけじゃ本当は怒りが収まらないはず。それでも相手が努力をしていることに目を向けられるただの嫌味な優等生ではない。

 

ルースはアミティの後を追いかけてちゃんと謝れる優しさを持っている。だけど自分が好きなことに夢中になるあまり、周囲が見えなくなって人を無自覚に傷付けてしまう側面*がある。何らかの形でこの問題をもう少し掘り下げて欲しかった。でも叱られてばかりいた子が、違う場所や世界ではありのままを受け入れられているのは心が救われる。

 

*監督のダナ・テラス氏はユーチューバーRebecca Roseとのインタビューの中で、ルースはADHDだと言っていた。

https://www.youtube.com/watch?v=_KU70UFGF2s

1:07:13~1:08:24

 

用語・小ネタ解説

カヴン制度

皇帝べロスによって作られた魔法を分野ごとに分ける制度。各カヴンを象徴する色とtrackがあり、’Head Witch’または’Coven Head’という特に優秀で皇帝に必要不可欠な役割を果たす魔法使いによって率いられている。

メジャーなカヴンは皇帝のカヴンを筆頭に、アボミネーション、吟遊詩人、魔法生物、建設、ヒーリング、イリュージョン、預言(占い師カヴンとも呼ばれる)、植物、ポーション。その他あらゆるマイナージャンルのカヴンがある。

 

カヴンの大会

カヴンへの勧誘イベント。Convention(英語:大会)とCoven(魔女の集まり)の言葉遊び。

学校や就職の合同説明会みたいに広い会場にブースが立ち並び、各カヴンの体験やトートバッグやボールペンなどがもらえる。各カヴンに入ると決めた人は腕に印を施され、そのカヴンの系統の魔法しか使えなくなる。

 

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https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Covention/Gallery?file=S01E05_Covention_%252890%2529.png

 

 

オマージュ

ドラゴンボール

パワー増強グリフの影響で力がみなぎるタイニー・ノーズはドラゴンボールスーパーサイヤ人のオマージュ

 

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https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Covention/Gallery?file=S01E05_Covention_-_28.png

シナボン

決闘中のイーダとリリスの背後にある軽食。Sin(英語で罪)-a-Bun(小型の甘いパン

)と発音で遊んでいる。人間界バージョンのCinnabonは1985年にシアトルで誕生した世界的に有名なシナモン・ロール専門店

 

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https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Covention/Gallery?file=S01E05_Covention_%2528278%2529.png

 

トリビア

リリスがサインをしている時に緑色の本にN-OW→Nowと解読できるコードがある。

 

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https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Covention/Gallery?file=S01E05_Covention_%2528277%2529.png

 

今回はアウルハウスとフーティが登場しない。全エピソードに登場するのはルース、イーダ、キングの3人だけ

 

これまでの話との関連

・イーダが指名手配されているのは諸々の軽犯罪を犯した以上にカヴンに無所属だから

リリスは妹にカヴンに入ってほしいと願っている

・時系列的には4話から約1週間経っている

 

 

レジェンド・オブ・コーラ ~骨太アジアン・スチームパンクファンタジー~

 

 

あらすじ

前作『アバター 伝説の少年アン』から70年後の世界。勝気でパワフルなアバター・コーラは、風の技を教えてくれると約束したテンジンを追って水の部族から共和城にやってくる。反ベンダー運動や闇の組織がはびこる大都市で、コーラは世界の平和と自分の内なるバランスを取り戻すために奮闘する。

 

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引用元:https://avatar.fandom.com/wiki/The_Legend_of_Korra?file=Promo_of_Korra_bending.png

 

見どころ

アジアン・スチームパンクの世界観

近世アジア風の世界だった前作から70年、コーラの活躍する時代は文明が大きく進歩している。国際都市の共和城にはいくつもの摩天楼がそびえ立ち、道路を自動車やケーブルカーが走る。スポーツのラジオ中継や無線、電話も普及するようになった。1920年代頃の近代アメリカや香港などをモデルに作られた世界観は、アバター・アンの時代から一気に洗練された。

 

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引用元:https://avatar.fandom.com/wiki/Welcome_to_Republic_City?file=Korra_in_Republic_City.png

 

時代の変化と共に新たな問題も持ち上がっている。貧富の差の拡大やマフィアの暗躍はもちろん、近代化と共にベンディング能力を持たないノンベンダーの有力者も登場。彼らの権力を主張する平等党の存在が国際都市に影を落とす。特殊能力を持つ者だけが力を握った時代は確実に変化していた。

 

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平等党の指導者アモン

引用元:https://avatar.fandom.com/wiki/And_the_Winner_Is...?file=Amon_speeching_in_the_Arena.png

 

白熱したバトル

実在する格闘技の動きをモデルにしたバトルは本作にも健在。四台元素に基づいたベンディングの技に加え、総合格闘技をモデルにしているプロ・ベンディングなど新たな戦闘スタイルが加わった。

 

ベンディングはもちろん、最大の特長は多くのノンベンダーが戦いに参加できるようになったこと。共和城の大企業や発明家によって、電気を用いた手袋やメカスーツが開発された。それをまとえば、生まれつき特殊な力を持たない人でもベンダーたちと互角に戦える。

 

ファンタジー的な技と科学の武器がぶつかり合うバトルやカーチェイスは最高にかっこいい。

 

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引用元:https://avatar.fandom.com/wiki/Asami_Sato?file=Asami_electrifies_barbarians.png

 

成長譚

レジェンド・オブ・コーラは10代の少女の一大成長譚でもある。前作が普通の少年からアバターの使命に目覚める話なら、本作はアバターが人間へと成長していく物語。怖い者知らずのコーラが、挫折を繰り返しながら仲間に助けられ、乗り越えていく様子が丁寧に描かれている。

 

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https://avatar.fandom.com/wiki/Korra?file=Korra_ready_to_fight.png

 

 

物語の初めの頃コーラは自信満々。正義感が強い反面、力ずくで問題を解決しようとしていた。守られて育った彼女は共和城に来たことで自分の未熟さや弱さと向き合わざるを得なくなる。特にシーズン3後に心身を傷付けられた状態から

 

苦しみ回復していく過程は、実際のPTSDや行動認知療法に基づいているだけあって圧巻だった。様々な経験を通じて、短期で強引なところのあった少女は、相手との対話を試みることで物事を解決へと導ける大人へと変化を遂げていった。

 

1話で不良相手を力任せにやっつけていたコーラは、最終回で「まだ学ばないといけないことがたくさんある」と師匠のテンジンに語る。彼女は本当に大きく成長した。

 

キャラクター

主人公のコーラは勝気でパワフルな17歳。アバターとして大の大人と互角に戦える力を持っている反面、年齢相応の繊細さや弱さも兼ね備えている。そんな彼女がピンチになったり落ち込む度にハラハラしながら見てしまった。

 

コーラを取り巻く仲間たちも個性豊か。コーラを取り巻く仲間たちも個性豊か。新たなチーム・アバターの仲間はコーラと仲良くなるマコとボーリン兄弟、そして初めての女友達アサミ。

 

 

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新生チーム・アバター

引用元:https://avatar.fandom.com/wiki/Team_Avatar_(Korra)?file=Forming_a_new_Team_Avatar.png

 

 

他にも気の技の師匠でアンの息子テンジンやその家族を筆頭に、数多くのキャラクターが登場する。誰もが人間らしい強さと弱さを抱えていて、シリーズを通して成長していく姿を見られるのは長編アニメの魅力の1つでもある。

 

f:id:karatachi-tree:20220124172946p:plain

個人的な推し:ヴァリックとジュー・リー

引用元:https://avatar.fandom.com/wiki/Zhu_Li_Moon?file=Zhu_Li_and_Varrick.png

 

 

また、『アバター 伝説の少年アン』に出てきたキャラクターや、その人に関係がある人物たちも顔を見せる。前作を見た人は本作で誰がどうなったか探すと楽しいし、本作が初めての人は後で前作を見ると彼/彼女たちの若い頃を知ることができる。

 

ファンタジーに欠かせないのが主人公の敵。アバター・アンの物語は勧善懲悪の物語で、火の国の王オーザイを倒しベンディング能力を奪うことで物語は完結した。

 

アバター・コーラは出会う敵は一味違う。シーズンごとに登場する敵の多くは、それぞれ自分の行動こそが正義だと心から信じている。力を持たざる者と持つ者が平等な世界を作りたい、権力者なき世界を作りたい、崩壊して見放された国の助けになって人が傷つくことのない世界を築きたい。

 

それぞれ強いベンディング能力を持つ上に行動にも納得のいく動機がある。力に比例して信念も強く、簡単には折れない相手。だからコーラは苦戦し、これまでの力任せな解決法とは別のやり方を学んでいかざるを得なくなる。一方的に倒して終わりという訳にはいかないヴィランは、様々な思想の人々が衝突し合う今だからこそ現実に迫っていた。

 

まとめ

レジェンド・オブ・コーラは特別な力を持った少女が、1人の人間へと成長を遂げる物語。前作を踏襲した王道のファンタジーでありながら、新たな世界観を作り上げて現代ならではのテーマを扱っている。

 

精霊の守り人』など強くてかっこいい女性キャラが好きな人やアジアン・ファンタジー好きにはもちろん、『十二国記』や『ヴァルデマール年代記』といった骨太な成長譚を楽しみたい人にもおすすめする。格闘技が好きな人は、バトルシーンでどのベンディングが何の格闘技をモデルにしているか比べると面白いだろう。

 

本作は2022年1月の地点ではニコロデオンを扱っているHuluで視聴できる。吹替版が作られてEテレ辺りで放送れるのを切望する。

 

 

 

 

 

 

 

 

ミラベルと魔法だらけの家 感想・考察 異端児は家族を再生へと導く

 

 

1.あらすじ

コロンビアの奥地にある町「エンカント」。村の屋敷「カシータ」に住んでいるマドリガル家の住人は、みんな魔法の才能(ギフト)を5歳の誕生日に授けられる。でもミラベルだけはギフトをもらえなかった。家族の中でコンプレックスを抱く彼女は、ある日カシータに亀裂が入るのを目にする。家と魔法の力が弱まっていると気づいたミラベルは、原因を突き止めようと奔走する

 

 

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引用元:https://www.disney.co.jp/movie/news/20210719_01.html

 

 

2.感想・考察

楽しいマドリガル

田舎の名家の崩壊と再生が、南米のカラフルな世界観によってファンシーに描かれていた。特に前半は、地方にある歴史の古い家や大家族、または地域を問わず一定の社会水準以上の家にありがちな闇が煮凝ってる。

 

家族の長アルマの姿勢がそれを特に物語っていた。家族の問題を周囲にひた隠しにして、すばらしい家庭を演出する。完璧ではない姿を見せるのは恥だとみなして、家族の体裁を守るためには個人に多少の犠牲を強いてもやむを得ないと思っている。愛情は伝わるから、みんなアルマに逆らえない。こうして築かれた虚像は、孫たちを追い詰めている。

 

力もちのルイーサは、常に強くなければと自分を追い詰めながら魔法の力が弱くなるのを恐れている。姉妹で一番きれいで花を咲かせるイザベルは、いつも美しく愛らしくいることを求められ、自分らしさを出せない。天気を操れるペパは自分の感情を無理やりコントロールしようとしてストレスをためているし、聴力の魔法が使えるドロレスは否応なしに情報が聞こえてしまうのをイザベルの婚約者への愛と共に秘めている。

 

他の家族も描かれてないだけで、多かれ少なかれ色々抱えているのだろう。それでも鬱屈を押し込んで毎日明るく振る舞い、魔法(ギフト)で村を支える。それがマドリガル家のあるべき姿だから。

 

異端児の「普通」の少女ミラベル

魔法(ギフト)を授けられなかったミラベルは、家族の中では異質な存在。社会奉仕や一族の繁栄といった責務を負わされない代わりに、自尊心を傷つけられ劣等感を抱えている。愛されていても、一族の血を引きながら魔法を使えないのは辛いだろう。でも「普通」のミラベルだからこそ、マドリガル家の問題を解決する鍵になれた。

 

家族の異端児や問題児は、一番立場が弱い存在である故に集団内のゆがみを浮き上がらせ、健全さの影に潜んでいるひずみや傷を癒すキーパーソンとなる。

 

ミラベルも例外ではない。家族の中で一人だけ「普通」の彼女は、魔法を使えないというマドリガル家の外では当たり前の価値観を一族に運び込んでいる。役立たずとして扱われることもある反面、義務やプレッシャーも少ない。実はもう1人の異端児としておじのブルーノがいるけど、彼は魔法が使えるために家族の縁から逃れられない。

 

ミラベルは家族の中で、唯一魔法というしがらみから自由な存在だ。だから周囲が村のため家庭のために忙しくしている中、カシータが壊れ始めている原因探しに奔走することができた。

 

他のみんなができることができないのは、逆に彼らができないことができるのを意味する。ミラベルは魔法が使えないからこそ、細かい所に目を向けられる。

 

アントニオのお祝いに家族と村人たちが浮かれる中、1人だけ家に入り始めている亀裂と魔法の源のロウソクの火が弱まっていることに気が付いた。皆が何事もないように日常を過ごす中、ルイーサの目に出ていたストレスのサインを見逃さなかった。それは魔法に頼れない彼女だからこそできたのだ。

 

異端児は家族を再生へと導く

ミラベルは失踪したおじのブルーノに会い、姉のルイーサとイザベラが本当の気持ちを出せるようになるのを手伝う。彼女の行動こそ、家庭に一人はいる「変わった子」の役割。集団をかき乱すことで風通しをよくして、新たな価値観を吹き込んでいく。

 

その姿にアルマが怒りを露わにする。彼女の考え方の良し悪しはさておき無理はない。自分が必死に築いて守ってきた家族の虚像を暴かれそうになっているのだから。

 

アルマが魔法と家に固執してしまっている以上、カシータは一度壊れ、魔法が消えてしまう必要があった。このままでは限界が近付いていることを彼女に理解させなければならなかったのだ。家が崩壊する様子を見るのは、コロンビア内戦によって住処を追われ夫を殺されたアルマにとっては過去に負った傷をえぐる光景だったろう。でもそうでもしなければずっと変わらなかったに違いない。

 

カシータの崩壊によって、アルマは授かった魔法の力を大事にするあまり、家族に負担を強いてしまったことに気づいた。そうなってしまった経緯と思いをミラベルに明かすことで、初めてマドリガル家の在り方を見直すことができた。本当に大事なのは魔法ではなく家族だし、自分が大変な時は村人たちに頼ってもいい。

 

魔法(ギフト)が使えないミラベルは、普通だからこそ家族が隠しているに正面から向き合い、もう一度カシータと絆を立て直すきっかけとなった。マドリガル家は以前のような開かれたようで閉ざされた家族ではない。自分たちの長所も短所も受け入れ、魔法の一族として村を助け、村人たちの助けを借りながら生きていく。カシータとマドリガル家は、ミラベルのおかげで生まれ変わることができたのだ。

 

ミラベルの魔法(ギフト)

ミラベルは魔法が使えない異端児と説明したけど、実は彼女にはカシータと直接つながる魔法が授けられたのではないだろうか。カシータの異変にいち早く気付いているし、本音を明かしたイザベラと和解すると家の亀裂が直ったりと、家の状態は彼女の心を表している。

 

マドリガル家の者は各自が自分の空間を持っていた。カシータ自体が彼女を表しているとしたら、魔法の扉が存在する必要がなかったのも納得がいく。最後にミラベルが家のドアノブをはめた時には扉が光って魔法が復活した。だからミラベルのギフトは何かをするというより、直接家につながっていることじゃないだろうか。

 

あとミラベルはもう1つのギフトを持っている。それは誰かの心に寄り添える力。

 

その力があるからこそ、ルイーサを負担や能力を失うことへの恐れ、イザベラを常に完璧でいなければならないプレッシャーから解放させることができた。従弟のアントニオも、優しいミラベルが大好きだ。そして最後には、悲しい経験から魔法と家に固執してしまっていたアルマの心を解放した。

 

一般人でありながら能力者や権力者に寄り添える人はそういない。ミラベルはとても素敵なギフトを持っている。