レジェンド・オブ・コーラ ~骨太アジアン・スチームパンクファンタジー~

 

 

あらすじ

前作『アバター 伝説の少年アン』から70年後の世界。勝気でパワフルなアバター・コーラは、風の技を教えてくれると約束したテンジンを追って水の部族から共和城にやってくる。反ベンダー運動や闇の組織がはびこる大都市で、コーラは世界の平和と自分の内なるバランスを取り戻すために奮闘する。

 

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引用元:https://avatar.fandom.com/wiki/The_Legend_of_Korra?file=Promo_of_Korra_bending.png

 

見どころ

アジアン・スチームパンクの世界観

近世アジア風の世界だった前作から70年、コーラの活躍する時代は文明が大きく進歩している。国際都市の共和城にはいくつもの摩天楼がそびえ立ち、道路を自動車やケーブルカーが走る。スポーツのラジオ中継や無線、電話も普及するようになった。1920年代頃の近代アメリカや香港などをモデルに作られた世界観は、アバター・アンの時代から一気に洗練された。

 

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引用元:https://avatar.fandom.com/wiki/Welcome_to_Republic_City?file=Korra_in_Republic_City.png

 

時代の変化と共に新たな問題も持ち上がっている。貧富の差の拡大やマフィアの暗躍はもちろん、近代化と共にベンディング能力を持たないノンベンダーの有力者も登場。彼らの権力を主張する平等党の存在が国際都市に影を落とす。特殊能力を持つ者だけが力を握った時代は確実に変化していた。

 

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平等党の指導者アモン

引用元:https://avatar.fandom.com/wiki/And_the_Winner_Is...?file=Amon_speeching_in_the_Arena.png

 

白熱したバトル

実在する格闘技の動きをモデルにしたバトルは本作にも健在。四台元素に基づいたベンディングの技に加え、総合格闘技をモデルにしているプロ・ベンディングなど新たな戦闘スタイルが加わった。

 

ベンディングはもちろん、最大の特長は多くのノンベンダーが戦いに参加できるようになったこと。共和城の大企業や発明家によって、電気を用いた手袋やメカスーツが開発された。それをまとえば、生まれつき特殊な力を持たない人でもベンダーたちと互角に戦える。

 

ファンタジー的な技と科学の武器がぶつかり合うバトルやカーチェイスは最高にかっこいい。

 

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引用元:https://avatar.fandom.com/wiki/Asami_Sato?file=Asami_electrifies_barbarians.png

 

成長譚

レジェンド・オブ・コーラは10代の少女の一大成長譚でもある。前作が普通の少年からアバターの使命に目覚める話なら、本作はアバターが人間へと成長していく物語。怖い者知らずのコーラが、挫折を繰り返しながら仲間に助けられ、乗り越えていく様子が丁寧に描かれている。

 

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https://avatar.fandom.com/wiki/Korra?file=Korra_ready_to_fight.png

 

 

物語の初めの頃コーラは自信満々。正義感が強い反面、力ずくで問題を解決しようとしていた。守られて育った彼女は共和城に来たことで自分の未熟さや弱さと向き合わざるを得なくなる。特にシーズン3後に心身を傷付けられた状態から

 

苦しみ回復していく過程は、実際のPTSDや行動認知療法に基づいているだけあって圧巻だった。様々な経験を通じて、短期で強引なところのあった少女は、相手との対話を試みることで物事を解決へと導ける大人へと変化を遂げていった。

 

1話で不良相手を力任せにやっつけていたコーラは、最終回で「まだ学ばないといけないことがたくさんある」と師匠のテンジンに語る。彼女は本当に大きく成長した。

 

キャラクター

主人公のコーラは勝気でパワフルな17歳。アバターとして大の大人と互角に戦える力を持っている反面、年齢相応の繊細さや弱さも兼ね備えている。そんな彼女がピンチになったり落ち込む度にハラハラしながら見てしまった。

 

コーラを取り巻く仲間たちも個性豊か。コーラを取り巻く仲間たちも個性豊か。新たなチーム・アバターの仲間はコーラと仲良くなるマコとボーリン兄弟、そして初めての女友達アサミ。

 

 

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新生チーム・アバター

引用元:https://avatar.fandom.com/wiki/Team_Avatar_(Korra)?file=Forming_a_new_Team_Avatar.png

 

 

他にも気の技の師匠でアンの息子テンジンやその家族を筆頭に、数多くのキャラクターが登場する。誰もが人間らしい強さと弱さを抱えていて、シリーズを通して成長していく姿を見られるのは長編アニメの魅力の1つでもある。

 

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個人的な推し:ヴァリックとジュー・リー

引用元:https://avatar.fandom.com/wiki/Zhu_Li_Moon?file=Zhu_Li_and_Varrick.png

 

 

また、『アバター 伝説の少年アン』に出てきたキャラクターや、その人に関係がある人物たちも顔を見せる。前作を見た人は本作で誰がどうなったか探すと楽しいし、本作が初めての人は後で前作を見ると彼/彼女たちの若い頃を知ることができる。

 

ファンタジーに欠かせないのが主人公の敵。アバター・アンの物語は勧善懲悪の物語で、火の国の王オーザイを倒しベンディング能力を奪うことで物語は完結した。

 

アバター・コーラは出会う敵は一味違う。シーズンごとに登場する敵の多くは、それぞれ自分の行動こそが正義だと心から信じている。力を持たざる者と持つ者が平等な世界を作りたい、権力者なき世界を作りたい、崩壊して見放された国の助けになって人が傷つくことのない世界を築きたい。

 

それぞれ強いベンディング能力を持つ上に行動にも納得のいく動機がある。力に比例して信念も強く、簡単には折れない相手。だからコーラは苦戦し、これまでの力任せな解決法とは別のやり方を学んでいかざるを得なくなる。一方的に倒して終わりという訳にはいかないヴィランは、様々な思想の人々が衝突し合う今だからこそ現実に迫っていた。

 

まとめ

レジェンド・オブ・コーラは特別な力を持った少女が、1人の人間へと成長を遂げる物語。前作を踏襲した王道のファンタジーでありながら、新たな世界観を作り上げて現代ならではのテーマを扱っている。

 

精霊の守り人』など強くてかっこいい女性キャラが好きな人やアジアン・ファンタジー好きにはもちろん、『十二国記』や『ヴァルデマール年代記』といった骨太な成長譚を楽しみたい人にもおすすめする。格闘技が好きな人は、バトルシーンでどのベンディングが何の格闘技をモデルにしているか比べると面白いだろう。

 

本作は2022年1月の地点ではニコロデオンを扱っているHuluで視聴できる。吹替版が作られてEテレ辺りで放送れるのを切望する。