ハズビン・ホテルへようこそ 感想(ネタバレなし) 地獄から送る傷ついた人々への癒し

https://www.amazon.co.jp/%E3%83%8F%E3%82%BA%E3%83%93%E3%83%B3%EF%BD%A5%E3%83%9B%E3%83%86%E3%83%AB%E3%81%B8%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%9D-%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%B3%EF%BC%91/dp/B0CLM8CW52

 

 

 

 

色々な海外アニメを見ているにもかかわらず、これまでハズビン・ホテルにはノータッチだった。アマプラでの配信開始に周囲が大騒ぎしている。たまには流行の波に乗ってみるか。そんな軽い気持ちで視聴した本作は、露悪的で不謹慎な18禁描写の下に心に傷を抱えた大人たちへの寄り添いと癒しが包まれていた。

 

あらすじ

地獄では年に1度、天国の使者アダム天使の軍団を率いて人口削減を名目に殺戮を繰り広げる。罪人たちを昇天させて人道的に罪人の数を減らすため、ルシファーの娘で地獄のお姫さまチャーリー・モーニングスターは「ハズビン・ホテル」を開き住人の救済を試み始めた。

 

見過ごされがちな大人のメンタルヘルスケア

肉体の健康をケアする重要性が広く知られているのに対し、精神面の健康と不調は見過ごされがちだ。子どもだと、まだ周りの大人に気付かれて支援につながりやすい。ところが成人になった途端に自己責任扱いされる風潮が根強い。

 

メンタルの問題は色々な出来事の積み重ねによって発生する根深いものだ。自分では防ぎようがなかった辛い体験、成育環境、その他あらゆる要因が影響している。にもかかわらず、そうなったのは全部あなたの選択だ、とばかりに自助努力を求められてしまいがちだ。それどころか過去に囚われているのは精神的に成長していないからだ、と軽蔑されることさえある。

 

こうした環境にいると、辛い時に誰かに助けを求めるのが難しくなってしまう。本当は救われたいのに、自分がこうなったのは自業自得だ。自分みたいな最低な人間に助けられる価値なんてないと言い聞かせて平気なふりをして心の傷に蓋をする。ハズビン・ホテルは、そんな人々を癒し救いの手を差し伸べる場所だ。

 

みんなの中にある善を見出すチャーリー

ホテルの発案者チャーリーは、殺伐とした世界に燦然と輝く地獄のプリンセスだ。根っからピュアな心の持ち主の彼女は、罪人たちに善の心があると信じて疑わない

 

中毒や依存症を筆頭にあらゆる問題を抱えたホテルの住人に対して、それぞれにいい所を見出し、欠点もその人らしさとして受け入れる。相手が裏切り者のスパイだとしても、決して見捨てない。地獄に似つかわしくない生来の優しさと純粋さで、彼女はホテルにきた者の心を癒す。

 

チャーリーは決して完璧なプリンセスではない。世間知らずで危なっかしいところがあり、よかれと思った行動で人を傷付けてしまうこともある。それでも失敗を重ねながら彼女は成長していく。

 

自分の長所と短所をどちらも受容できるからこそ、チャーリーは他の人のよさを見出し、相手が恥じている欠点や失敗も受け入れられるのだ。そんな彼女のホテルで、罪人たちは徐々に癒される。

 

ホテルで癒されていく罪人たち

ハズビン・ホテルにくるまで罪人たちは、心から安心できるとは言えない環境にいた。支配者から搾取されていたり、孤独だったり、失敗を許されず、常に自分を強く見せないといつ誰に付け込まれるかわからない。日常的に仮面を被り、不健全な方法でその苦しみを麻痺させる日々を送っていた

 

彼らにとってハズビン・ホテルは、自分を信じて受け入れてくれる初めての場所だった。素の自分を見せたり失敗しても、誰かに馬鹿にされたり見下される心配がない。殺伐とした地獄で生き抜いてきた者たちにとっては、生まれて初めて安心して障壁を下せる居場所に違いない。

 

もちろんホテルにきたからすぐに状況が解決に向かう訳ではない。例えばセックス・ワーカーのエンジェルダストは暴力的な契約主から逃れられていない。バーテンダーハスクも上級悪魔でホテルの運営を手伝うアラスター支配下にいるままだ。

 

でも作中歌’Loser, Baby’でハスクがエンジェルに歌いかけるように、どん底でも一人じゃない。同じ負け犬の仲間と居場所がいる。心の拠り所になる安全基地を得た罪人たちは後ろを向きつつ前向きになっていく。そして自分も周囲の人も大切にし、居場所を守るため立ち上がれるようになったのだ。

 

こじれた大人への癒しの物語

ハズビン・ホテルは傷ついた人たちが欠点だらけの自分が受け入れられる居場所を得る。そして自分自身と周りの人を受容して少しずつ前を向き始める物語だ。連発されるFワードと下ネタに包まれているのは、色々と抱えた大人たちへの優しい寄り添いとエンパワメント。

 

不謹慎でカオスながら根底にある倫理観がしっかりしている本作は、清く正しい「善き人」になれなかった自分には居場所がないのか?ダメな自分に救われる資格はあるのだろうか?と苦しむ人たちの救いになるだろう。

 

現実世界は地獄よりも地獄的である。勇気をかき集めて助けを求めても応じてもらえず、SOSを呼ぶ声を封じられ見過ごされてしまうことも少なくない。だからせめて物語の中では、苦しんでいる人が助けを求めたら必ず手を差し伸べられる。そして過ちを犯した人にもチャンスが与えられる居場所があってほしい。

ヴォクス・マキナの伝説 シーズン2 感想 

https://m.media-amazon.com/images/S/pv-target-images/064ac6279ede250eed74b7810edeb27b209ff5f8f7ffa45bb387228bf2873aa7.jpg

 

 

 

シーズン1からファンが首を長くして待つこと約1年、『ヴォクス・マキナの伝説』シーズン2、全12話が公開された。開幕から王都がドラゴンたちに襲撃されてスリルがフルスロットルの第2章。手に汗握る展開と骨太な物語には、映画ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』から興味を持った人も、こだわりが強いファンタジー愛好家も大満足まちがいなし!

 

あらすじ

王都エモンはドラゴンによって破壊された。邪悪なドラゴン集団クロマ・コンクラーベから世界を守るべく、ヴォクス・マキナは伝説の武器ヴェスティッジ・オブ・ディバージェンスを探す旅に出る。一行の波乱の道中は思いがけない出会いに満ちていた……

 

尋常じゃない恐ろしさのドラゴン

古今東西の西洋ファンタジーにお約束と言っていいほど登場するドラゴン。本作では巨大で火を吹いて町を破壊するなんてかわいく見えるやつが登場する。D&Dには様々なレベルのドラゴンが登場するが、これは最強クラスだ。

 

王道の炎を吐くやつはもちろん、回数無制限で透明化できて大量の酸を吐くドラゴン、毒ガスを吐くドラゴン、一瞬で人や物を凍り付かせるドラゴン。剣と魔法では手も足も出ない怪物たちが容赦なくタルドレイの町を破壊し、逃げ惑う人々の肉体を溶かして虫けらのように殺戮する。

 

ウリエル国王もその他大勢も容赦なく殺された。39年前に出版されたD&Dのセッションが原作の小説ドラゴンランスで酸や毒ガスを吐く竜の描写を読んだことはあるが、実際に映像化すると鳥肌が立った。ホビットの冒険のスマウグにさえあんなに恐怖を覚えたことはない。西洋ではドラゴンが悪の権化として描かれることが多いが、その真骨頂を見せつけられた。

 

広がるエクサンドリアの世界

ドラゴンに立ち向かう旅に伴い、一行は様々な場所を訪れる。古代都市ヴァッセルハイム、異世界フェイの国、エルフの都市シンゴーン、ウェストラン、火のアシャリが暮らすパイラ……王都エモンとホワイトストーン以外の場所が数多く登場し、エクサンドリアの世界が一気に広がっていく。

 

どの場所も特色豊かで画面からその場の空気感が伝わってくるほどだ。湖底の神殿に満ちた湿気、整っていながも溢れるシンゴーンの活気、薄暗い酒場のむせるような空気。映像で伝わらない感覚を刺激され、一緒にその場にいる錯覚に陥るほどだった。

 

 

白熱するバトル&前作を上回る下ネタ

ヴォクス・マキナの旅には世界の命運がかかっているのだ。モンスターとドラゴン相手に剣に魔法、銃と拳にマジックアイテムを駆使した総力戦が繰り広げられる。武器をはめた切断されかけの片腕をもう片方の手でちぎるケヴダヴの捨て身の戦いには、敵ながら思わず彼に奮い立ち雄叫びをあげた。

 

今シーズンに特筆すべきは武器を使わない戦。肉体は傷つかないが一歩間違えれば致命的な戦いが繰り広げられる。因縁の相手との交渉や、心の傷に付け込む相手など血肉沸き立つバトルとは別の意味で緊迫感に満ちた戦闘が繰り広げられる。特にヴェスティッジを守る古代生物スフィンクスとスキャンランの対決は必見だ。

 

もちろん、なんと言っても魅力的なのはドラゴンとの闘い。全滅必須の覚悟であらゆる作戦を使い迎え撃つが、極めつけは内から外に殺そうと黒竜アンブラシルの肛門から体内に入る試み。かれこれ長い間ファンタジーオタクをやってきたが、ドラゴンの尻穴と腸を見たのは人生で初めてだ。向こうもちっぽけな生き物に尻から突っ込まれるとは思ってもいなかっただろう。

 

ドラゴンの肛門のインパクトからもわかるように、下ネタとパロディも衰えるどこかレベルアップ。天然の幻覚成分でラリれば見える奇妙奇天烈な光景。思わず声に出して歌いたくなる作中歌。緊迫したバトルの途中ですらこれでもかと笑わせてくる。

 

特にフェイの国の神出鬼没な獣人ガルミリーには、思わず描いたアニメーターの心境に思いを馳せてしまった。誰があの場面を担当したか知らないが、尻と肛門とブツを描くためにその仕事に就いたのではなかっただろうに。

 

自分と向き合う一行

ここまで穴だの尻だの連呼しているが、ヴォクス・マキナの神髄は大人の成長物語だ。一行は旅の道中で自分自身と、中でも自身の傷と向き合わざるを得なくなる。本作では特に前シーズンで専らパーシーの過去の清算に力を貸していた仲間に焦点があてられていた。

 

父親から常に否定されて育ち、その辛さに正反対の方法で対処しつつ苦楽を共にしたヴァクスとヴェクス。良心の芽生えをきっかけに元いた半巨人集団から捨てられ、その後もかつての自分の行いに良心の呵責を感じていたグロッグ。それぞれに異なる試練が訪れる。

 

そしてスキャンランの新たな一面も垣間見えた。ふざけた変態ノームはその見かけとは裏腹に本物の愛に飢えている。普段の姿はその裏返し。構ってほしいから下品な言動に走り、相手に捨てられるのが嫌だから関係を持っては自ら振るのを繰り返す。

 

逃げてばかりだった彼は、ついに自分に、そしてドラゴンに対峙せざるを得なくなる。逃げる自体は悪いことではない。むしろ自分を守るためには賢明な判断でもある。王都をドラゴン集団が襲ったときも、黒竜アンブラシルの攻撃を受けて瀕死のグロッグを見たときも「もう撤退しよう。もう十分だろ」とスキャンランは言う。その判断は向こう見ずではなくなった大人のそれだ。

 

でも、時には目の前にあるものを受け入れざるを得ない。敗北が目に見えながらもアンブラシルに立ち向かい、倒されていく仲間たちの窮地を目の当たりにしたスキャンランはようやく自分を奮い立たせた。ギリギリまで逃げようとしながらも、最後には覚悟を決めて巨大な竜と対峙する姿は人間臭くも最高にかっこいい。

 

迎え撃つは波乱の道

『ヴォクス・マキナの伝説』シーズン2では逃げてきた大人が自分の運命を直視する。ある者は自分に立ち向かい、別の者は使命に目覚める。過去を清算して前に進む者もいれば、まだ対峙できる自信がない者もいる。一行はそれぞれ迷い苦しみ、待ち受けるものの大きさにひるみながらも覚悟を決めた。酸いも甘きも経験した者は彼らの葛藤に胸が熱くなるだろう。

 

残るドラゴンはあと3頭。クロマ・コンクラーベはいまだ世界に君臨し続け、アンブラシルより強力なドラゴンばかりが待ち受けている。謎多きリプレーの行方もわからないまま。TRPGセッションでプレイヤーと視聴者を爆笑の渦に巻き込んだあのシーンも観たい。これでも物語のアクセルはまだ踏まれたばかり。波乱に満ちた冒険譚の続きが待ちきれない。

楽天ブックス

ヴォクス・マキナの伝説 本気で大人向け!波乱のハイ・ファンタジー

 

https://www.google.com/imgres?imgurl=https://m.media-amazon.com/images/I/81aRIMrTNWL._RI_.jpg&imgrefurl=https://www.amazon.com/Legend-Vox-Machina-Season/dp/B09PZG2979&h=1920&w=2560&tbnid=_CfYRdDACLf9FM&tbnh=194&tbnw=259&usg=AI4_-kR98QY8yQNgWBjbsaojAKZf7D5ddw&vet=1&docid=gHuU-5DtKyiuRM

 

 

 

手に汗握る冒険に魅せられ、思いきり笑って泣ける熱い王道ファンタジーを観たい。そんあななたにアマゾン・プライムで配信中の『ヴォクス・マキナの伝説』をお勧めする。テンポよし、キャラは濃い、世界観も重厚でダークユーモアとゴアなバトル満載。こういう大人向けのハイ・ファンタジー待ってました!!

 

あらすじ

落ちこぼれ傭兵集団ヴォクス・マキナは金なし、宿なし、先の見通しもなし。切実に仕事が欲しい一行は、ウリエル国王が募集したエモン郊外の村々を襲撃した犯人(もしくは原因)を見つける任務を引き受ける。最初は金欲しさだった一行だが、惨劇を目の当たりにして世界を救えるのは自分たちだけと気付く。

 

TRPGのリプレイを元に作られた海外アニメ

『ヴォクス・マキナの伝説』はTRPGダンジョン&ドラゴン』(略称:D&D)をプレイするアメリカのプロの声優集団クリティカル・ロールのセッションを元に作られた大人向けの海外アニメだ。TRPGとは(テーブルトークRPG)の略語。ゲームマスターと呼ばれる役割を務める人がルールの管理役と進行役、他の参加者がキャラクターを作りプレイヤーとして参加するアナログ版のRPGゲームだ。

 

一般的なゲームと同じくTRPGにも様々な作品があり、中でもD&Dは1974年に発売されてから現在では第五版まで出ているロングセラーだ。それを全力でプレイするクリティカル・ロールの実況中継が人気となり、クラウドファンディングによってアニメ化が実現したのが本作だ。それぞれのキャラクターをゲームで演じた声優がそのまま役を担当し、ゲームマスターも実際に脇役の一部に声を当てている。

 

好みがわかれる作風

大人が本気で楽しんだセッションを元に作られた本作は、18禁に全振りしている。物語の開始5分で視聴者を振るいにかけると言っても過言ではない。初登場は酒場。パーティーのほぼ全員がノリノリで一気飲みに興じ、酔ったまま(約1名は文字通り吐きながら)喧嘩を売ってきた相手と乱闘を始める。この英雄とはかけ離れたお世辞にも上品とは言えない姿に、早くもついていけない人はいるだろう。

 

戦闘シーンも容赦がない。邪悪なドラゴンや巨人、亡霊の集団、グロテスクな生き物などが次々と襲い掛かり、パーティーを1話につき最低1回は全滅必須の危機に陥れる。戦い方も全身に敵の血しぶきを浴びる、人体を真二つにスライス、巨人の両眼に手を突っ込んで潰す、酸の中に全裸で飛び込むなど流血沙汰がかすり傷に見えるレベルだ。

 

こんな世界観なので「今まで殺した一番変なモンスターのエピソード」といった不謹慎な笑いが緊張を和らげてくれる。もちろん下ネタ満載。主人公のスキャンランからして、国中の人と寝たがる自他共に認める変態ノームなのだ。

 

Fワードはもちろんのこと、隙あらばゲロ、うんこ、全裸、暴言、飲酒、その他あらゆる汚いネタが放り込まれる。タマ殴りゲームという字面だけで股間が痛くなるゲームも健在だ。こうして書くと下品な大人向けコメディと思われそうだが、真の魅力はそれ以外にある。

 

大人の葛藤と成長

本作最大の魅力は大人たちの成長物語だ。成長譚は子供や若者だけのものではない。全員が25歳以上のヴォクス・マキナの仲間は冗談や毒舌を飛ばしながらも、その陰では各々が苦悩やトラウマを抱えている。

 

双子のハーフエルフ兄妹ヴァクスとヴェクスは育ったエルフの里に苦い思い出がある。同じ種族のケイレスは、優れた自然魔法の使い手だけど自信がない。ノームで癒し手のパイクは力を授けてくれる神とつながりが切れたと感じ、スランプに陥る。彼女の幼なじみの半巨人グロッグはパイクとの別離に心を痛める。特筆すべきは人間の銃使いパーシー。凄惨な過去のトラウマによって復讐に魂が飲み込まれそうだ。

 

現に人は成長しても悩み続ける上に意外と過去を乗り越えていない。子供の頃に夢描いた輝かしい姿とは程遠く、悩みや苦しみを抱えながら生きている。『ヴォクス・マキナの伝説』はそんな大人たちが仲間を支えに成長する物語だ。彼らは種族も出自もばらばら、その上にお互いの過去をほとんど知らない。それでも相手の話に耳を傾け、理解しようと努め、時に叱咤激励しながら助け合う。

 

「君には(俺の気持ちは)わからないんだ」と殻に籠るパーシーに「じゃ、説明して、わからせて」とパイクは声をかける。共感するのが難しいからこそ相手の気持ちがわかるふりをするのではなく、自分たちにはわからないことを説明してもらって理解しようとする。これが団結力も協調性もない凸凹パーティーが成立する一番の理由だ。

 

心の傷は完全には癒えない。自分に対する不安もすぐには消えない。だけどそれを共有して共に戦ってくれる仲間がいる。だからこそケイレスは自分の力を最大限に発揮できるようになり、パイクはスランプを乗り越え、パーシーは新たな一歩を踏み出すことができた。

 

こうした成長物語には、まだアイデンティが定まりきっていない子供やティーンとは異なる魅力がある。酸いも甘いも経験し、自己を確立しているが故に苦しむ姿は、大人が主役だからこそ描けるものだ。その姿には親近感が沸くし、悩んでいるのは自分だけじゃないと元気が出てくる。

 

全力で大人に向けたファンタジー

『ヴォクス・マキナの伝説』はアナログゲームを全身全霊で楽しむ大人たちによる大人のための海外アニメだ。苦手な人は苦手だけど好きな人はとことんハマる。決して万人受けしないけど、擦れた冒険者集団に不謹慎なジョーク、セクハラやラッキースケベの一切ない本格的な下ネタに笑える人。そして『指輪物語』をうんと人間臭くしたファンタジーが読みたい心には確実に刺さると保証する。

 

物語自体はすでに完結していて、一行の過去がシーズン2以降で深く掘り下げられるのは確定済みだ。オープニングと作中で示唆されたヴァクスとヴェクスの子供時代はとても気になる。一見悩みと無縁そうなスキャンランも過去に何かありそうだ。彼らの波乱に満ちた冒険を世界中の熱いファンと共に楽しもうではないか。

 

 

陰謀論のオシゴト 1話 用語・小ネタ解説

この「辞典」はネットフリックスアニメ『陰謀論のオシゴト』を楽しむため、作中の小ネタや翻訳ネタを広く浅く網羅した記事です。この作品はあくまでフィクションで、陰謀論に信憑性は全くと言っていいほどありません。それを念頭に置いた上でお楽しみください。

 

 

ホワイトハウス前のランド

陰で牛耳っているエリート(Shadow elites)アメリ陰謀論集団Qアノンが信じている内容が元ネタか。ランドはコグニート社を暗示している。

 

人間に化けたトカゲたち(Shape shifting lizards):トカゲ人間説。著名な政治家や有名人、王族たちが実は異星人で我々の世界を牛耳っている説

 

大統領がロボットレーガンが作っている大統領ロボットのことを言っている

 

1ドル札を折り曲げると”boobs”になる:ある方法で1ドル札を折り曲げると印刷された’United States of America’(アメリカ合衆国)を’Tits of America’(アメリカ乳首)にすることができる。やり方はこちらhttps://www.youtube.com/watch?v=YZ4zO9NEriA

 

「5Gの電波でいかれちまった」:電磁波5Gが人体に悪影響を与えるという説。NTTドコモが公式サイトで化学的な根拠をもって否定している

https://www.docomo.ne.jp/corporate/csr/network/radio/safe.html

 

アンビエン(Ambien)睡眠導入剤。化合物としての名前はゾルピデム。Ambienはアメリカでの名称で日本ではアステラス製薬マイスリーという名前で発売している

 

ウェッツェルズプレッツェル(Wetzel’s Pretzel):。アメリカのファーストフード店フランチャイズ。様々な種類の焼きたてプレッツェルが食べられる。日本にも2012年に上陸したが現在は閉店

 

コグニート社(Cognito Inc.):英語とイタリア語で 匿名の、変名の、お忍びで、身分を隠して、といった意味のincognito’を’Cognito Inc’と並び替えている

 

コグニート社のロビー

人面羊(sheeple):sheep(羊)とpeople(人)を掛け合わせた造語が元ネタ。自分では

何も考えず多数派に流される人々のことを表す

 

イエティヒマラヤ山脈に現れるとされる毛深くて2足歩行する未確認生物物体。2017年にアメリカの研究チームがDNA検定を行った結果、正体は熊の可能性が高いと発表した

 

トカゲ人間:著名な政治家や有名人、王族たちが実は異星人で我々の世界を牛耳っている説

 

Lost and Foundのカートにあるウォルト・ディズニーの首、バラク・オバマ元大統領の出生証明書、ローマ教皇の司教冠:著名な政治家や王族などが影ですり替わっている説か。日本でも天皇家が途中で入れ替わった説があるらしいので、その西洋版か

 

天気を管理しているのが…:天気が外国の気象兵器によってコントロールされている説があるとか

 

ダウ・ジョーンズの株価が生贄の儀式で決まる

 

モアイ人間イースター島の石像がモデル

 

ティーブの目:額の目は開くと直観力が芽生えるとされる第三の目

 

ティーブのPC:リンゴ印の部分がピラミッドになっている

 

大統領をロボットとすり替えようとしている:前述の著名な政治家や王族などが影ですり替わっている説が元ネタか

 

お笑いショーに出てみたら(Save it for stand-up night):Stand-up comedyというスタイルのコメディ。コメディアンが舞台で1人でマイクを持って演じるタイプのコメディで、世界各地のコメディ・バーやコメディクラブで行われている

 

ミーティングルームにいるギャング

ケムトレイルを吸うのは禁止ケムトレイルとは「飛行機が空中に有害な化学物質や生物兵器を秘密裏に散布している」という陰謀論

 

月面着陸のセットでセルフィー取るのもダメアポロ計画陰謀論が元ネタ

 

JRの部屋

棚に置いているもの

上から

ミネルヴァの梟が掘られた皿

(不明)

平たい地球

双頭の子羊の首

1969年のJFK殺害に仕様された銃

何かのオブジェ

本のタイトル(Perfect You)Amazonで検索したところ2008年に刊行された恋愛小説らしきものが見つかった。恐らく違う本だと思われる

 

本のタイトル(Bohemian Grove):シーズン1-11話で秘密結社たちが集う"バーニングマンスタイル"のイベントフェスだと明かされる。現実の設定はカリフォルニア州モンテリオのボヘミアンアベニュー20601にある制限付き2,700エーカーのキャンプ場で、サンフランシスコを拠点とするプライベートクラブ、ボヘミアンクラブに所属

 

JRの写真:1枚目 小ブッシュ? 2枚目 クトゥルフ神話に登場する怪物

 

JRの机の左にある置物:インカ文明に由来するものか

 

認めてくれてとてもうれしいっす(’Thrilled to be serving whoever gives me approval’):英語では’Thrilled to be serving whoever gives me approval’。直訳すると「誰でも内定くれる人の元で働きたくて仕方なかったっす」

 

コグニートオリエンテーション用ビデオ

 

夢にある商品が出てきたことは?:後述のサブリミナル効果の実験か

 

太古の昔から世界は秘密結社が支配してきた:古くはテンプル騎士団や薔薇十字軍に始まりフリー・メイソンやKKKまで昔からあらゆる秘密結社の存在がささやかれている

 

廊下

キツネの死骸の映像をアニメに差し込んで見せてるサブリミナル効果の実験。サブリミナル効果とは非常に短い時間や小さな刺激によって、人間の潜在意識に影響を及せるとされている

 

レーガンの仕事部屋

フェイスブックは悪魔?スターバックスはどう?:Facebookの新しい社名Metaはアラビア語ヘブライ語で「死体」を意味する言葉。スターバックスと悪魔の関係は不明だが、サンディエゴを拠点に活動するキリスト教団体が限定版ロゴは裸で両足を広げた娼婦みたいと避難した一件が2008年にあったようだ

https://www.epicurious.com/archive/blogs/editor/2008/05/starbucks-drink.html

 

ここじゃ世界を守る技術を開発してるんだよ:原文では’At least here I develop tech that could prevent war with Atlantes’「少なくともここじゃアトランティスとの戦争を防げるテクノロジーを開発してる」

 

ニューラライザー:映画『メンインブラック』に登場するアイテム。ペンに似た形でスイッチを押すと光ってその光を見た人の記憶が消える

 

食堂

セルフィーを(to trick the country into surveilling themselves)考え出したの。国を監視できるようにね 

 

イルカ人間のスーパー兵士計画:人間はあらゆる生物を軍で使用している。例えば米軍は機雷など水中の危険物体を感知するのにイルカを使っているらしい。人間とイルカのハイブリッドにすればいいところ取りのスーパー兵士ができると考えたのだろう

https://www.businessinsider.jp/post-198891

 

地球の空洞から来たサイキックキノコ:地球空洞説が元ネタか

 

デイン・クックのネタを覚えまくってんじゃん:デイン・クックはDain Cookはアメリカのコメディアン。最近では2017年公開の『アメリカン・ゴッズ』に出演

 

ロナルド・レーガンをあの病気にしたブツあるぞ アルツハイマーロナルド・レーガン米大統領は1994年11月5日に国民に宛てた手紙でアルツハイマー病と診断されたと公表。原因は複数あるがもちろんブツが原因ではない

 

レーガンとランドの家

ランドの本棚

The Fringe of Frill(フリルとふち飾り):裁縫か装飾史の本?だとしたらランドと一番縁がなさそう

 

Apophenia for dummies(バカのためのアポフェニア):アポフェニアとは無意味だったり無作為な情報から一定の法則性を見出すこと

 

 

テレビを見るランド

チートス:1948にチャールズ・エルマー・ドーリンによって開発されたロングセラーのチーズスナック。名前の由来はCHEE(チーズ)+TOS(小さい)=小さいチーズと名前そのまんま

コスモス天文学者カール・セーガン監修。1980年代に放送されたドキュメンタリー番組

 

レーガンの机の上

レーガンの机の上にある胸像:C.Sとイニシャルが書かれているが実在の人物か

どうか不明

 

コルクボードに貼ってあるメモ

メモ1

Call mom

H₂O Bill

FLANNEL shirtsネルシャツ レーガンが着ているのか?

 

化学式

N=R・fp・ne・fi・fi・fe:ドレイクの方程式。銀河系に存在して人類と接触できる可能性のある地球外生命体の数を推定する算術式

 

数式

ML, DL, N……(以下数式):Machine Learning(機械学習)、Neural Learning(神経学習)、Deep Learning(ディープ・ラーニング/深層学習)。ロボタスの人工知能を作るためのものかと思われる

 

メモ2

CLOVER TEST

Pentagon Shredder

 

ロボタスを発表するレーガン

彼が我々を襲う心配はないな?ターミネーターのように:映画『ターミネーター』シリーズのターミネーターは、未来の戦争においての人類の英雄ジョン・コナーの存在を抹殺するためにジョンの母サラを殺すために過去に送り込まれた人造人間

 

スーパーボールのCM:アメリカ最大のスポーツイベント、ナショナル・フットボールリーグの優勝決定戦のコマーシャル

 

 

アーロン・ソーキンアメリカ合衆国の劇作家・脚本家・テレビプロデューサー・映画監督。実話をベースとした会話劇、法廷劇が得意

 

政治専門チャンネル:原文ではC-SPAN 15。C-SPAN(Cable-Satellite Public Affairs Network)はアメリカ合衆国議会を中心に政治を専門とするケーブルチャンネル

 

 

不満なレーガンとポスターを貼るブレットのやり取り

Kazaamのポスター:『ミラクル・アドベンチャー/カザーン』は1996年にアメリカで公開されたファンタジーコメディ映画。主演俳優は当時バスケットボール選手だったシャキール・オニール。主役を演じたフランシス・キャプラは第19回スティンカーズ最悪映画賞で【最悪の助演男優】部門と【最悪のヘアスタイル】部門にノミネートされた

 

ピットブルも言うでしょ?誰(だれ’DALE’)って(Come on, like Pitbull says, “Dale!”):『ピットブル』はアメリカ出身のラッパー。'DALE'は2015年に彼が出したアルバム。日本語版は'Dale'’(デイル)をローマ字読みの誰と掛け合わせている

 

ブレットのプレゼン

 

A Phone that’s a shoe:靴型電話。スパイ・コメディードラマ『Get Smart』で使われていた

 

Spy kids training programスパイキッズレーニングプログラム

 

Baby Shark:いまだに著作権の所有者不明のYoutube童謡’Baby Shark’(サメのかぞく)が元ネタか。

 

Tribal Taco Tuesday:火曜はみんなでタコスを食べよう

 

Champagne Wednesday:水曜はみんなでシャンパンを飲もう

ブレット、かわいい奴

 

Late-again, Great-again Dr. Tardy「遅れるけど仕事はできる遅刻博士」:Late-again, Great-againは’late’と’great‘で頭韻、どちらも後ろに’again’を付けることで脚韻を踏んでいる。’Tardy’は形容詞で「遅刻する(being late for)」と同じ意味。ブレットは言葉遊びのセンスがある

 

ダメ!許可しない。そう呼ぶやつはグアンタナモに送るアメリ南方軍グアンタナモ共同機動部隊が運営する収容キャンプ「グアンタナモ湾収容キャンプ」には、テロに関係するとされた人物が数多く収容されている

 

大学入試(SAT)じゃ丸を全部塗りつぶした:SATでは2セクション合計58問を80分で解かないといけない。レーガンは問題が難しいからあり得ないと言っているか、適当に解答しているだけと言いたいのかもしれない

 

デイヴ・マシューズ南アフリカ共和国出身のアメリカ人ミュージシャン。歌を通してモグラからのメッセージを受け取ってるかは不明

 

Crash Into Meアメリカのロックグループ’Dave Matthews Band’の曲。 1997年米国で最も権威のある音楽チャート’Billborad’(ビルボード)で第7位、1998年にグラミー賞の最優秀ロック・パフォーマンス賞にノミネートされた

https://www.youtube.com/watch?v=k7in-9E3ImQ

 

大した事ないっしょ、僕らしくやるっしょ(’No big dealio, just keep it realio’):英語版だと語尾に’o’を付けている。陽気なイタリア人の真似をすることで不安を払拭しようとしているのではないかと考えられる

 

ランドとテレビを見るレーガン

テレビのテロップ

EARTH ANTARCTICA INEVITABLE南極大陸不可避

DAVE MATTHEWS RECEIVES NOVEL PEACE PRIZE:デイヴ・マシューズがノーベル平和賞受賞。デイヴ・マシューズは南アフリカ共和国生まれの歌手で『デイヴ・マシューズ・バンド』というグループのリード・ボーカル。ソングライターでもある。もちろん現実には受賞していない

BARLEY PRICES FALL, HORRIFYING BARLEY EXPERTS:大麦の価格が下落。大麦の専門家を震撼させる

AMERICA TO BE PLACED IN GIANT CUBEアメリカが将来的に巨大な立方体に入れられる

SENATOR EATS LIVE MOUCE, COMMENTS “HISSSSSS”…:議会が生きたネズミを食べ、'シャーーーーーー...'とコメント

WALRUS OIL PRICES RISE:セイウチ油価格高騰

ジンゴイズム:自国の利益を守るためなら他国に高圧的・強圧的・好戦的な態度を取って実力行使や武力行使もいとわない姿勢。または自国・自民族優越主義的な立ち位置を差す。由来は露土戦争の頃にパブやミュージックホールで流れていた歌

https://www.youtube.com/watch?v=h1ZFzs7hL5g&t=7s

 

ロボタスを元に戻せ!

マヤ歴が終わるのは今日か:マヤ歴はマヤ文明で紀元前5世紀ごろから使用されている暦法。1つの周期の終わりが世界の滅亡に結びつくとされ2012年には世界が滅亡する終末論として取り上げられた。当然世界はまだ存在している

 

「僕が雇われたのは顔になんの特長もなくて衛星で追跡できないからなんだ。僕はしょぼいんだ。パパがいつも言ってた」:ブレットが家族から受けていた虐待の暗示

 

The End Is Nearと壁に描かれた部屋で飲み物を飲もうとする揃いのジャージにスキンヘッドの人たち:不明。終末論を信じている人たちの集まりか

 

モーリー (super Molley)合成麻薬MDMAの隠語。ダメ。ゼッタイ。

 

Georgetown class of o2, Sigma Phi:ブレットがイェール大学で所属していたクラブの立地、クラスの組、クラブの愛称??

 

38のクラブに入ってしごきも38回:ブレットが大学時代にいじめられていたことの暗示

 

ボストン・ダイナミックス:ロボットの研究開発に携わっているアメリカの企業。国防高等研究計画局 (DARPA) の支援によってあのシュールな動きの四足歩行するロボット「ビッグドッグ」や、人間の動きをシミュレーションするソフト「DI-Guy」を開発

 

シンギュラリティ:技術的特異点。人間の脳と同じレベルのAIが誕生する地点を意味する。そこを超えたらAIは加速的に進歩するらしい

 

みんなに失望した。だから仕事に没頭したんだよなレーガンが受けた虐待の暗示

 

メキシカンで半額マルガリータは?(’How About Two-for-one Margarita at Don Cuco’s?):‘Don Cuco’はアメリカの3か所で展開するメキシコ料理店。マルガリータテキーラをベースにしたカクテル

 

『陰謀論のオシゴト』に隠されたサブリミナルメッセージ シーズン1パート2

注:この記事には作中に画像の探し方と内容のネタバレがあります。

 

 

 

 

 

 

作中に隠された差し込み画像

陰謀論のオシゴト』パート2が公開された。パート2でも制作陣は視聴者を楽しませるため、こっそりと本編が始まる直前に画像を差し込んでいる。パート1の時より手が込んでいて制作陣の遊び心と本気を見た。

シーズン1の隠し画像の記事はこちら

https://karatachi-tree.hatenablog.com/entry/2022/06/13/120511

 

画像の探し方

本編には全て約7秒目に画像が差し込まれている。ここで黒い画面に白文字で表示されている’a netflix series’が白く塗りつぶされる。その後にジーッという音がして一瞬だけ画像が差し込まれている。1秒もたたないうちに画像が荒くなって本編が始まるので、再生速度を一番遅い0.5にすると確認しやすい。

 

画像の内容

11話 

最初に公開されたシーズン1パート2のトレーラーと同じ内容。

6つの秘密結社が集う”バーニングマン”スタイルの野外フェス、ボヘミアン・グローブの映像。左下には年月日:2000年7月15日午後10時。右には録画されている時間:1時間3分11秒。過去の誰かが録画したものとわかる。映っている2人はローブの形からイルミナティの上層部ではない組織員かイベント参加者と思われる。

 

12話 

左にプロビデンスの目。右に’Janssen Portrait of Shakespeare’という1610年代初期に描かれた作者不詳のウィリアム・シェイクスピア肖像画

余談だがこの肖像画は後世の加筆によりハゲに見えていたそうだ。

https://luna.folger.edu/luna/servlet/detail/FOLGERCM1~6~6~28422~102045:Janssen-Portrait-of-Shakespeare

https://politicworm.com/oxford-shakespeare/expanding-the-question/vizualizing-shakespeare-a-tale-of-two-portraits/

 

シェイクスピア肖像画が使われているのは恐らく12話が俳優をネタにした回だから。

劇作家シェイクスピアを描いたとされる肖像画は何枚もあるがどれも顔が違う。12話には著名な俳優が数多く登場し、作中では女性の血液によって若さを保つ裏の顔がある。俳優は様々な役を演じる職業。そういった意味では多様な顔を持っていると解釈できる。

 

 

13話 

架空の古代の壁画。左にサイキックキノコ4匹(4人?)、右に槍を持って走る棒人間4人と焚火。左上やや中央に人間の手形が2つ。作中で言及された人間とサイキックキノコの対立を描いている

 

14話 

1903年ノースカロライナ州キルデビルヒルズの砂丘での初飛行前のライト兄弟と思われる写真。2つに破かれていて左は作中に登場する2人の架空の兄弟ユダと思われる。実際にその人物が誰かは不明。知っている人がいれば情報求む。

 

15話 

荒れて砂嵐が起こっているテレビ画面。画面いっぱいにでかでかと赤い文字でCONSUMEと映っている

 

16話 

コグニート社のラボの検査結果を伝える用紙:用紙の右下斜めに検査を行った者の名前、職業、検査に何を使ったのか意図的に隠す形で採血容器が1本置かれている。

以下は検査結果内容の拙訳

日付:11月18日

検査結果

急性友情ウィルス2感染

患者:ブレット・ハンド

検査

Bloodの後は採血容器で隠されているが血液サンプルとわかる

患者ID:099355245407-1

検査:サンプル

実験 

友情ウィルス

(抗体検査)

検査結果

陽性

ウィルス負荷> .013

医師(採血を入れる容器で隠されているがアンドレの名前が書かれていると推測される)

 

17話

映画の脚本。映画’Kazaam’(邦題:『ミラクル・アドベンチャー/カザーム』)は17話の時間軸変更によってタイトルが次々と変わる。脚本のタイトルは’SHAMUZAAMSUKISAURUS’。実在の映画が元ネタになっているためか、副題と監督名などは英語圏で読める人が少ないキリル文字表記。右下には錨マークの周囲を文字が囲む二重円デザインのスタンプが押されている。

 

18話

年季の入った本が並ぶ図書館の本棚に立てかけられた新品の’Berenstain Bears’(『バーンスタインベアーズ』)の表紙。アメリカではロングセラーの絵本でアニメ化やゲーム化もされている。古き良きド健全な児童書のはずが17話の時間軸変更の影響でキャラクターが一家全員全裸。外性器まではっきりと描かれている。

アウルハウス 新たな魔法のあり方を描いたファンタジー

注意:この記事にはネタバレが少し含まれます。ストーリーの根幹に関わる内容は書いていませんが、気になる方は本編を視聴後に読むことをお勧めします。

 

 

似て異なる二つの物語

『アウルハウス』は魔法学校や箒に乗ったスポーツといった典型的な魔法ファンタジーものに見せかけてそのお約束をひっくり返した作品だ。特に魔法学園もののベストセラー『ハリー・ポッター』シリーズとは似た要素がありつつも、実際は対極的なテーマを描いている。異世界召喚ものとロー・ファンタジーの違いの影響はあるだろうが、随所に異なる点が見受けられる。

 

みんなの学校と選ばれし者の学校

作中に登場する魔法学校の方針から、すでに価値観の違いが伺える。『アウルハウス』に登場する【ヘキサイド魔法魔術学校】は門戸が開かれた学校だ。魔法が使えると証明できる人なら誰でも入学・編入できる。ルースは生まれつき魔法が使える魔界生まれの子供たちとは異なり、魔法陣を描く方法で編入を認められた。生徒は自由に専攻を選べ、作中では途中から希望者は複数の専攻を掛け持ちすることが許される。通学生の学校であることから学外での行動の制限はない。

 

対象的に『ハリー・ポッター』のホグワーツは選ばれし者の学校。表向きはハーマイオニーみたいに普通の人間【マグル】出身者も入学が許されている。その実態は血統主義で、マグル出身者は魔法族に生まれながら遺伝子を引き継がなかった者【スクイブ】の先祖返り。その他のマグルの子はどれほど意欲があっても入学できない。何を学ぶかは三年生以降に多少の自由が与えられるが基本は固定。全寮制で敷地内と近くのホグズミード村以外への移動は禁止されている。

 

カヴン制度と組み分けの儀式

『アウルハウス』は個を大事にする流動的な社会制度を理想としている。最も顕著なのが作中の世界にある【カヴン制度】の批判だ。魔界にはカヴンという異なる分野の魔法に特化した組織がある。魔法学校を卒業後に入団が義務付けられ、一度入ると特殊な印によって所属するカヴンの魔法しか使えない。拒否すると皇帝から指名手配され、刑罰として石化されてしまう。

 

カヴン制度にはメリットもいくつかある。卒業後に一律で入団するため学歴格差が少なく、入りさえすれば生活が保障されるので貧困に苦しむ人は見受けられない。使える魔法は制限されるものの、得意分野や好きな分野の仕事ができる。

しかし法を犯してまで無所属を貫くイーダの姿勢からも、作中では個人の可能性と自由を抑圧する社会システムとして否定されている。

 

一方『ハリー・ポッター』は【組み分け】を通じて固定的な社会制度を書いている。新入生は入学したその日に頭に組み分け帽子を被る。知性を持ったその帽子が異なる特徴の四つの寮の中からその子にふさわしいと考える寮を選ぶ。一度決められると卒業するまで同じ寮生と寝起きを共にし、スポーツなどのイベントは寮ごとに競い合う。社会人になってからも寮の中での友人関係や寮同士の対立がその後の人間関係にも影響し続ける。

 

作中では寮制度の問題点もいくつか挙げられている。生徒が必ずしもふさわしい寮に組み分けられるとは限らない。グリフィンドールとスリザリンの対立は人間関係の不和の一端を担っている。こうした欠点を書いているが基本的にこの制度を否定していない。基本的には居場所を得たハリーを通じて、所属によって絆が深まり、帰属意識に誇りを抱き、アイデンティティを確立できるものとして描かれている。

 

ジェンダーと多様性

ジェンダーの多様性は『アウルハウス』最大の特長と言っても過言ではない。作中には男と女はもちろんのこと、イーダの元恋人レインのようなノンバイナリーや性別が明かされてないキャラクターもいる。性的指向もルースはバイセクシュアル、ゲイやレズビアンカップルや女性と中性の元カップルの存在も描かれている。恋愛に興味がある人だけではない。イーダの姉リリスは、アセクシュアル&アロマンティックという他者に恋愛感情や性的欲求を抱かない者だ。

 

こうした人間模様の中でも特筆すべきは、主人公ルースと同級生アミティの恋愛。全年齢向けアニメとして初めて少女同士がお互いに惹かれ合い、恋に落ち、付き合う中でお互いを深く理解し、絆を深めていく様子を丁寧に描いている。

 

ハリー・ポッター』の性の価値観は伝統的なものが極めて多い。作中では女の活躍が多く見受けられ、主人公側では優等生のハーマイオニーや副校長マクゴナガル、敵陣営にもヴォルデモートの側近ベラトリックスなど手ごわい女性が登場する。またウィーズリー兄妹の母親で主婦のモリーなど彼女たちが活躍する方法は多様に満ちている。

 

しかし登場人物の性別は男性と女性のみ、無性や両性、または体と心の性別が一致しない人は全く登場しない。全寮制学校が舞台である以上は恋愛の描写も多いが、男女のカップルのみ公に書かれている。闇の魔法使いグリンデルバルトがダンブルドアの元親友で恋人という設定は、本編完結後に公表されスピンオフの『ファンタスティック・ビースト』シリーズで取り上げられている。

 

またハリーを始め多くの生徒は、卒業後に同じ学校の同級生や卒業生と結婚し家庭を持つ。望んで独身を貫く登場人物はあまり見受けられなかった。

 

作品の背景

アウルハウスは現代の理想の社会を目指す物語。それは流動的な居場所を持つことで個性を最大限に生かし、多数派と価値観が違うマイノリティも自然に受け入れられるといった自由が保障される世界だ。監督のダナ・テラス氏自身がバイセクシュアルだと公表しており、多様な存在が認められる世界を大切にしている。

 

特筆すべきは『ディズニーのブランドに合わない』という理由で話数を大幅に減らされたにも関わらず、従来の作品では打ち切りを避けるためシーズンの最後に入れることが多かったLGBTQIAの描写をシーズン1からしっかり入れたことだ。シーズン3の1話でルースがバイセクシュアルだと母親にカミングアウトする場面からも、監督がこのようなテーマを真摯に扱っていることがわかる。

 

特筆すべきはジェンダーの多様性のみならず、あらゆるマイノリティについて取り上げていることだ。ヒロインのルースがその代表で、ドミニカ系アメリカ人でADHDの傾向がある。人種やニューロダイバージェント(脳機能の多様性)は、現代だからこそ焦点が当てられる。

 

一方ハリー・ポッターは特権を持った者が揺るぎない伝統を維持する世界。マグルとの混血を受け入れるなど、変えるべきところは変えながら途絶えるリスクがある血統と文化を守る世界観だ。ホグワーツも学費無償という点以外は、上流階級の子弟が通う寄宿学校パブリック・スクールがモデル。四つの寮は英国の階級制度を風刺しているといった歴史が長い国の背景が垣間見える。

 

作者J.K.ローリングは自身が元夫からDVを受け、貧困の中で執筆を続けたシングルマザーだった。自身が苦しんだ経験から女性や子供たちの権利を大切にしている。多様な年齢や職業の女を作品に登場させたのもそういった背景があるだろう。他にも人狼のルーピン先生など、不治の病により社会的ハンデを背負うキャラクターがいるなど弱者にも優しい視点を向けている。

 

その反面、トランスジェンダー女性は女性ではないという趣旨の主張をツイッターで行うといった保守的な一面が垣間見える。ジェンダーに関する描写が極めて少ないのは当時の児童書で扱えなかった以外に、作者の思想が反映されていると考えられる。

 

多様性が伝統を打ち破る

『アウルハウス』と『ハリー・ポッター』は実に対照的なファンタジー作品だ。一方は革新、もう一方は柔軟な伝統を重視している。どちらにも異なるよさがあるものの、前述のJ.K.ローリングの発言に失望してホグワーツを去り、ヘキサイドを新たな居場所にした者が少なくないのは事実だ。あの言動は居場所がない子の心の拠り所を提供しながら、一部の人を締め出す行為とも捉えられてもおかしくない。

 

『アウルハウス』がハリポタの影響を受けているのは事実で、作中にはカヴン制度の他に、金のコガネムシを取れば大量の得点がチームに入るスポーツといったパロディが見受けられる。それらはホグワーツの学校生活を揶揄した可能性が極めて高い。

 

魔法学校の門戸を生まれつき魔法が使えない人に開き、個性が受け入れられる現代の理想を描いた本作はファンタジーの新たな金字塔となった。時代はスクイブが見捨てられる世界から、魔力がないハンディキャップがあっても別の方法で魔法使いになれる時代へと変わっていく。多様性を認める『アウルハウス』はこれからのファンタジー作品の魔法のあり方を大きく変えていくだろう。

陰謀論のオシゴト オープニング 用語・小ネタ解説

注意

この「辞典」はネットフリックスアニメ『陰謀論のオシゴト』を楽しむため、作中の小ネタや翻訳ネタを広く浅く網羅した記事です。この作品はあくまでフィクションで、陰謀論に信憑性は全くと言っていいほどありません。それを念頭に置いた上でお楽しみください。

 

 

 

プロビデンスの目

キリスト教神の摂理を表すシンボルで神の万能の目を意味する。現在でも1ドル紙幣やアメリカの国章の裏に使われている

 

天動説

地球が太陽系の中心で他の惑星がその周囲を回っている説。正しいのは地動説の方

 

地図

Googleで調べた限り本来この場所に島はない

 

ランドと一緒にビーチにいる人物

左からスティーブ・ジョブズと(名前が2話に出てくる)、エルヴィス・プレスリー

 

黒いローブ姿の集団

陰謀論のオシゴト』作中で世界を牛耳っている存在。J.Rは「ローブの御前」と読んでいた

 

手術台で麻酔にかけられたグレンと一緒にセルフィーを取るジジとアンドレ

2人ともいいのか?グレンの左にいるのは顔の元になったイルカ、右で別の人に手術されているのはグレイ・タイプに近い宇宙人

 

墜落したと思われる宇宙船とマイクとサルたち

元ネタは映画『サルの惑星』か

 

万華鏡のように映されるブレット

元ネタ不明

 

アトランティス島爆破ミッション

アトランティスとは古代ギリシャの哲学者プラトンが『ティマイオス』『クリティアス』で言及している島。一次は栄えたものの海中に沈んだらしく、今でも根強く存在を信じる人がいる他『アトランティス』『ふしぎの海のナディア』など多くのSFファンタジー作品の元ネタとなっている

 

ロボレーガン

4話でレーガンが作る外見は自分そっくりのロボット

 

アポロ計画陰謀論

バズ・オルドリン、ルイ・アームストロングライカ犬?を背後から誰かが撮影

 

ロボットの大統領

大統領入れ替わり説。それのローマ教皇版やら天皇家版もあると聞いたことがある

 

100ドル札の中央に書かれたジョージ・ワシントンが悪魔になる

ドル札に悪魔崇拝が仕込まれている陰謀論

 

大統領の設計図

レーガンが作った大統領ロボットのもの

 

口から先の別れた細い舌が出ているリンカーンの顔写真

トカゲ人間説。著名な政治家や有名人、王族たちが実は異星人で我々の世界を牛耳っているという考え

 

レーガンのアップ→トカゲの目→手術を施される目

元ネタ不明

 

地球平面説

地球は丸ではなく平たい円盤みたいだという考え。古代から信じられてきた説で地球が丸いと証明された現代でも「国際地球平面協会」が存在する

 

コグニート社のゆかいな仲間たち

個性豊かなアブナイ面子