アウルハウス 4話 侵入者は誰だ 考察

 

 

アウルハウス4話は今後の伏線となる情報が多い。今回は特にイーダとキングについて掘り下げられている。魔法の仕組みについても明らかにされていて、話が進んだ後に見返すと色々な発見があるかもしれない。

 

1.キングの寂しさ

 愛すべき妖魔キング。外見は骸骨をかぶった子犬みたいで、アヒル模様の靴下と格闘するなど行動も子犬や子猫みたいな愛くるしさがある。甘いお菓子が好きで、ウサギの人形「フランソワ」を家臣として連れ歩く様子はまるで幼い子供。日本語版では一人称「吾輩」と偉そうな態度とのギャップもかわいらしさを加速させている。

 

 キングはかわいいだけじゃなくて謎めいている。力を奪われて今の姿になったとイーダは語っていたが、あの王冠には実際には何の魔力もなかった。そもそもキングがどこで生まれたのか、なぜイーダと一緒にいるのか全く明かされていない。作中では人間じゃない存在も描写されてるけど、キングと同じような形の種族は1人もいない。我々はキングのことを知っているようで知らない。

 

それはルースとイーダも同じだ。2人はキングをかわいがっているけど、真剣に相手にされないと感じさせてしまっていた。わかっているようで相手の気持ちに気づかないことはけっこうある。やっている側は悪気がない分、本人が傷ついていると気づきにくいのがまた厄介。実際にルースも人間界でキングと似たような寂しさを感じていたのに、授業の動画にかわいいスタンプを付けたりと最初の方は真剣に話を聞いてない。

 

家族の中でも年少だったり立場の弱い人や、グループ内のいじられキャラはキングと似たような思いをしているのかもしれない。真剣に向き合って欲しいのに軽くあしらわれてしまったり、お邪魔虫扱いされてしまう。

 

友達がいなくて、誰からも自分の意見や発言を真剣にとらえてもらえない。ルースに妖魔について知ってもらうことで、ようやく自分みたいな者を真摯に受け止めてくれる誰かができると思った。そう言われて初めて、ルースはキングに自分と同じ思いをさせていたとようやく気づいた。

 

2人はお互いの気持ちを理解し合って、最終的には協力してイーダを元に戻せた。でも現実には手遅れになって仲がこじれてしまうことが多々ある。我々もルースとキングのような関係を築けたらいいのかもしれない。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/The_Intruder/Gallery?file=Hugging.png

 

 

2.イーダの呪い

4話ではイーダが呪いにかかっていることが初めて明らかになる。毎日ポーションを飲まないとフクロウの魔物に変身してしまう症状は、薬で症状をコントロールしないといけない慢性疾患や発達障害のメタファだと思った。

 

誰も呪いをかけられたくないけど、正しい方法で体調を管理できる。このイーダの説明は、命への別状は少ないけど日常生活に支障をきたす病気や、ADHDの多動や衝動性など社会生活のハンデとなる症状を服薬や投薬によって抑える対処療法に当てはまる。

 

‘No one likes having a curse, but if you take the right steps, it's manageable.’とイーダが言うように、きちんと薬を飲んで対処すれば生活できる。それでも自ら進んで病気やハンディキャップを抱える人はいない。毎日忘れないように薬を飲んで、常に体調に気を付けるのは決して楽なことではない。特にイーダみたいな保護者の場合は、子供にそれを見せまいとするのもわかる。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/The_Intruder/Gallery?file=S01E04_The_Intruder_%2528264%2529.png

 

 

ルースとキングが薬を飲んだら魔法が使えると考えたように、健康な人が試験で高得点を取るためにコンサータやアデロールを飲むといったことは現実に起きている。でもその薬は本当に必要な人のためにあるもの。そうじゃない人が飲んで成果を出したとしても、体に悪いし根本的な解決にはならない。結局のところ、2話でイーダが言っていたように遠回りでも地味に学んでいくのが一番の近道だ。

 

イーダの呪いには謎が残っている。誰がどうやってかけたのか、いつか解ける日が来るのか。気になることはたくさんあるけど、今はルースとキングも呪いについて説明してもらったから今後は対処できるし、元の姿に戻れたからひとまず安心。

 

 

3.ルースの魔法

これまで魔法修行をがんばってきたルースの努力がようやく実った。ファンタジーには、魔力が先天的な素質で決まる作品が少なくない。『ハリー・ポッター』シリーズにはハーマイオニーみたいに普通の人間出身の魔法使いもいるけど、実はそういう子には先祖に魔力を持たない魔法族がいたりする。他の作品でも貴族だけが魔法を使えたり、才能は生まれつきだったり、なんだかんだ血筋や遺伝子、またはチート能力がものを言う。

 

アウルハウスは魔力の源について斬新な設定を出してきた。魔界の人間は心臓の横についている魔法袋から魔法を使う。魔力が生物由来の設定はあまり見かけたことがない。魔法袋を持っていないルースは、魔界においてハンディキャップを抱えたマイノリティとも解釈できる。

 

それでも魔法を使うのをあきらめきれないルースは、自分にできる別のやり方を見つけて魔法を使えるようになった。魔界の住人が書く魔法円の中には魔法陣がある。それを紙に書いて発動させれば魔法袋がない人間でも魔法が使えるのだ。

 

現実世界の人間にも得意不得意があって、自分ではどうしようもない部分がある。でも何かができないなら、周囲と違った方法でできるようになればいい。それを認めるアウルハウスの魔法は本当の意味で平等で、「もしかしたら自分にもできるかも」と希望を与えてくれる。きっと魔法だけじゃなくて、他のことに挑戦する勇気も与えてくれる。

 

本作は自分に居場所がないと感じている「はみ出し者」にそっと寄り添い、真摯なメッセージと希望を与えてくれる。キングは一体何者なのか、イーダに呪いをかけたのは誰なのか、ルースの魔法修行はどうなるか。魔界とアウルハウスは謎に満ちている。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/The_Intruder/Gallery?file=S01E04_The_Intruder_%2528507%2529.png