ミラベルと魔法だらけの家 感想・考察 異端児は家族を再生へと導く

 

 

1.あらすじ

コロンビアの奥地にある町「エンカント」。村の屋敷「カシータ」に住んでいるマドリガル家の住人は、みんな魔法の才能(ギフト)を5歳の誕生日に授けられる。でもミラベルだけはギフトをもらえなかった。家族の中でコンプレックスを抱く彼女は、ある日カシータに亀裂が入るのを目にする。家と魔法の力が弱まっていると気づいたミラベルは、原因を突き止めようと奔走する

 

 

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引用元:https://www.disney.co.jp/movie/news/20210719_01.html

 

 

2.感想・考察

楽しいマドリガル

田舎の名家の崩壊と再生が、南米のカラフルな世界観によってファンシーに描かれていた。特に前半は、地方にある歴史の古い家や大家族、または地域を問わず一定の社会水準以上の家にありがちな闇が煮凝ってる。

 

家族の長アルマの姿勢がそれを特に物語っていた。家族の問題を周囲にひた隠しにして、すばらしい家庭を演出する。完璧ではない姿を見せるのは恥だとみなして、家族の体裁を守るためには個人に多少の犠牲を強いてもやむを得ないと思っている。愛情は伝わるから、みんなアルマに逆らえない。こうして築かれた虚像は、孫たちを追い詰めている。

 

力もちのルイーサは、常に強くなければと自分を追い詰めながら魔法の力が弱くなるのを恐れている。姉妹で一番きれいで花を咲かせるイザベルは、いつも美しく愛らしくいることを求められ、自分らしさを出せない。天気を操れるペパは自分の感情を無理やりコントロールしようとしてストレスをためているし、聴力の魔法が使えるドロレスは否応なしに情報が聞こえてしまうのをイザベルの婚約者への愛と共に秘めている。

 

他の家族も描かれてないだけで、多かれ少なかれ色々抱えているのだろう。それでも鬱屈を押し込んで毎日明るく振る舞い、魔法(ギフト)で村を支える。それがマドリガル家のあるべき姿だから。

 

異端児の「普通」の少女ミラベル

魔法(ギフト)を授けられなかったミラベルは、家族の中では異質な存在。社会奉仕や一族の繁栄といった責務を負わされない代わりに、自尊心を傷つけられ劣等感を抱えている。愛されていても、一族の血を引きながら魔法を使えないのは辛いだろう。でも「普通」のミラベルだからこそ、マドリガル家の問題を解決する鍵になれた。

 

家族の異端児や問題児は、一番立場が弱い存在である故に集団内のゆがみを浮き上がらせ、健全さの影に潜んでいるひずみや傷を癒すキーパーソンとなる。

 

ミラベルも例外ではない。家族の中で一人だけ「普通」の彼女は、魔法を使えないというマドリガル家の外では当たり前の価値観を一族に運び込んでいる。役立たずとして扱われることもある反面、義務やプレッシャーも少ない。実はもう1人の異端児としておじのブルーノがいるけど、彼は魔法が使えるために家族の縁から逃れられない。

 

ミラベルは家族の中で、唯一魔法というしがらみから自由な存在だ。だから周囲が村のため家庭のために忙しくしている中、カシータが壊れ始めている原因探しに奔走することができた。

 

他のみんなができることができないのは、逆に彼らができないことができるのを意味する。ミラベルは魔法が使えないからこそ、細かい所に目を向けられる。

 

アントニオのお祝いに家族と村人たちが浮かれる中、1人だけ家に入り始めている亀裂と魔法の源のロウソクの火が弱まっていることに気が付いた。皆が何事もないように日常を過ごす中、ルイーサの目に出ていたストレスのサインを見逃さなかった。それは魔法に頼れない彼女だからこそできたのだ。

 

異端児は家族を再生へと導く

ミラベルは失踪したおじのブルーノに会い、姉のルイーサとイザベラが本当の気持ちを出せるようになるのを手伝う。彼女の行動こそ、家庭に一人はいる「変わった子」の役割。集団をかき乱すことで風通しをよくして、新たな価値観を吹き込んでいく。

 

その姿にアルマが怒りを露わにする。彼女の考え方の良し悪しはさておき無理はない。自分が必死に築いて守ってきた家族の虚像を暴かれそうになっているのだから。

 

アルマが魔法と家に固執してしまっている以上、カシータは一度壊れ、魔法が消えてしまう必要があった。このままでは限界が近付いていることを彼女に理解させなければならなかったのだ。家が崩壊する様子を見るのは、コロンビア内戦によって住処を追われ夫を殺されたアルマにとっては過去に負った傷をえぐる光景だったろう。でもそうでもしなければずっと変わらなかったに違いない。

 

カシータの崩壊によって、アルマは授かった魔法の力を大事にするあまり、家族に負担を強いてしまったことに気づいた。そうなってしまった経緯と思いをミラベルに明かすことで、初めてマドリガル家の在り方を見直すことができた。本当に大事なのは魔法ではなく家族だし、自分が大変な時は村人たちに頼ってもいい。

 

魔法(ギフト)が使えないミラベルは、普通だからこそ家族が隠しているに正面から向き合い、もう一度カシータと絆を立て直すきっかけとなった。マドリガル家は以前のような開かれたようで閉ざされた家族ではない。自分たちの長所も短所も受け入れ、魔法の一族として村を助け、村人たちの助けを借りながら生きていく。カシータとマドリガル家は、ミラベルのおかげで生まれ変わることができたのだ。

 

ミラベルの魔法(ギフト)

ミラベルは魔法が使えない異端児と説明したけど、実は彼女にはカシータと直接つながる魔法が授けられたのではないだろうか。カシータの異変にいち早く気付いているし、本音を明かしたイザベラと和解すると家の亀裂が直ったりと、家の状態は彼女の心を表している。

 

マドリガル家の者は各自が自分の空間を持っていた。カシータ自体が彼女を表しているとしたら、魔法の扉が存在する必要がなかったのも納得がいく。最後にミラベルが家のドアノブをはめた時には扉が光って魔法が復活した。だからミラベルのギフトは何かをするというより、直接家につながっていることじゃないだろうか。

 

あとミラベルはもう1つのギフトを持っている。それは誰かの心に寄り添える力。

 

その力があるからこそ、ルイーサを負担や能力を失うことへの恐れ、イザベラを常に完璧でいなければならないプレッシャーから解放させることができた。従弟のアントニオも、優しいミラベルが大好きだ。そして最後には、悲しい経験から魔法と家に固執してしまっていたアルマの心を解放した。

 

一般人でありながら能力者や権力者に寄り添える人はそういない。ミラベルはとても素敵なギフトを持っている。

アウルハウス 4話 侵入者は誰だ あらすじ 用語・小ネタ解説

 

 

あらすじ

1.キングはルースに様々な妖魔を教えようとしているが、ルースは真剣に聞いていない。すると恐ろしい沸騰した雨が降ってきた。

 

アウルハウスを危険な雨から守るバリアを張ったイーダは疲れていた。ルースは魔法を教えてほしいとせがみ、キラキラのボールペンでイーダを釣る。イーダが教えてくれたのは光の魔法。魔界の住人たちは心臓横にある魔法袋から魔法を使うのだ。

 

魔法の袋がないルースがどうすればいいか、イーダにもわからない。ルースはイーダが魔法をかける所を動画に取ろうとしたが、途中でイーダは倒れてしまった。

 

2.イーダが死んだ!慌てるルースだがイーダはいびきをかいている。二人で彼女を部屋の巣に運んだあと、ルースは魔法の練習を続ける。キングの授業を聞いてあげると約束すると、彼はイーダが毎日特別なポーションを飲むと教えてくれた。

 

その薬を飲んだら魔法が使えるかもしれない。ルースはこっそり飲もうとしたが、大きな雷に驚いて瓶を割ってしまう。すると部屋中の明かりが消え、フーティの叫び声が聞こえてきた。大きな怪物に襲われて気絶したフーティを見て、キングは怪物の正体を、魔界で最強の妖魔スナグルバックと考える。

 

真っ暗な家の中を探索する二人。イーダの部屋に向かうが、室内は荒らされて誰もいない。ルースとはぐれたキングは捜索を続けるうちにスナグルバックに会うが、その正体は全然怖くない怯えた妖魔だった。そこに上から手が伸びてきてスナグルバックは食べられてしまう。

 

3.逃げるうちにルースと再会したキングは、怪物の正体はイーダで、ポーションは呪いを抑制する薬だと知った。二人はイーダを元に戻す作戦を練る。光を使おうとしたルースが録画した動画を見ていると、魔法円の中に魔法陣が見えると気づいた。それを写し取ると、明るい光が浮かび上がる。ルースの初めての魔法だった。その魔法を使って、二人はイーダを止めることに成功する。

 

回復したイーダは、2人に呪いについて話した。まだ幼かった頃に呪いを受け、原因はわからないが魔法薬を飲まないと怪物に変身してしまう。だから人々に「アウル・レディ」と呼ばれるのだ。

 

ルースとキングに後を任せて休むイーダ。夢の中で自分に呪いをかけた者の影と対峙するが、それが誰かわからなかった。

 

感想

感想および考察はこちら

https://karatachi-tree.hatenablog.com/entry/2021/12/01/165434

 

用語・小ネタ解説

用語

妖魔

魔界に住んでいる知的生命体。純水と受動攻撃的な発言(怒りをぶつけられるのではなく、黙られたり無視されたりと消極的な態度で攻撃されること)に弱い。’Even demons have inner demons’「妖魔にも内なる魔物が潜むのだ」とキングが言うように、内面の恐ろしさは外見以上に怖い

 

Boo boo buddy club(ばんそうこう仲間)

’boo boo’はアメリカ英語で軽い擦り傷を意味する幼児語。’boo boo buddy’は、幼児のちょっとした怪我に貼るカラフルでかわいい形のパッチ。中にゲルが入っていて、温かいものと冷たいものがある。

’boo boo buddy club’とは作中の造語で、軽いケガをしたばんそうこう仲間。仲間同士で痛みを分け合うのをかけているかも

 

魔界の天気

イーダによると魔界に天気はない代わりに以下の現象が起こる

・boiling rain: 焼けるほどの熱湯が降る

plagues:伝染病

・gorenados:血の竜巻?

shale hail:岩が降る

・painbows:虹みたいだけど体が裏表になってしまう

 

魔法

何もない所から魔法を使える訳ではなく、ちゃんと法則がある

  1. 杖には魔力が込められているが、まずは杖なしで魔法を使えないといけない
  2. 魔界の住人たちは心臓の横にある魔法袋から魔法を使う。円を書くことによって魔法は発動する
  3. 書く魔法円は大きければ大きいほど効果は高い

   4. 魔法袋がない人間も、魔法陣を書くことで魔法が使える

 

 昔は別の方法で魔法を使っていたらしいが、その詳細は不明

 

スナグルバック

黄色い牙を持つピンクのサル。甲羅は取り外し可能。本ではボイリング島最強の怪物と説明されていたが、実際は大人しくて臆病な性格。イーダに食べられて無事吐き出されたが、本人曰く尻尾が体内で消化されてしまった

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Snaggleback?file=Snaggleback.jpg

 

 

 

小ネタ

ウィローの制服

オープニングでピンクから緑になっている

 

キリン

キングのスクラップボードの左上に貼ってある妖魔大行進の絵にキリンがいる。伝説の珍獣麒麟が元ネタで、作中のキリンは元々魔界の生き物だったと考えられる

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/The_Intruder/Gallery?file=S01E04_The_Intruder_%252819%2529.png

 

キングの授業の時に見える本のタイトル

以下タイトルの直訳

Infernal Medicine:地獄の薬

Atlas of the Pit:図解大穴

The Big Book of Misery:みじめさについて ※The Big Bookは何かを広く浅く取り上げた本につけられる傾向がある

So You Sold Your Soul:君は己の魂を売ったのか

The Horror of Cooking:恐怖の料理

Just the Pacts:ただの契約

Torture Vol XXIV.:拷問第124巻 

 

キングは立派な妖魔になるための入門書をたくさん読んでいるみたいだ

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/The_Intruder/Gallery?file=S01E04_The_Intruder_%252825%2529.png

 

ウィローとタイニーノーズ

一瞬だけウィローが登場。大事な植物の鉢を両腕にかき集め、ジャンプして歯でブラインドを閉じる脅威の身体能力を見せている。タイニーノーズも雨宿りできる場所を求めて、ネズミらしき生き物を穴から追い出している

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/The_Intruder/Galleryfile=S01E04_The_Intruder_%252855%2529.png

 

イーダは光るものに惹かれる

カラスやカケスが光るものが好きという言い伝えが元ネタ

 

初版、それとも第二版?

本オタクやマニアあるある

 

暗号

呪いが発動したイーダが匂いを嗅いでいる本に暗号が書かれている。暗号を解読するとEH-P-AH-R-T" となり、 "Apart"(別れる)という意味になるらしい

 

ルースは両利き

光の魔法円をトレースした時には右手、壁に書いた時は左手を使っている

 

オマージュ

冒頭

ヒル模様の靴下と格闘するキングを解説するルース。イギリス訛りになっているのは、BBCの自然ドキュメンタリーで有名なリチャード・アッテンボローの真似

 

ボード「妖魔101」

キングが妖魔を解説するために作ったボード「妖魔101」の左上をよく見ると『怪奇現象グラビティー・フォールズ』のビル。右下の方には有名なTRPGダンジョンズ&ドラゴンズ』に登場する怪物「ビホルダー」も描かれている

 

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引用元:

https://theowlhouse.fandom.com/wiki/The_Intruder/Gallery?file=S01E04_The_Intruder_%252813%2529.png

 

 

スナグルバックの絵

キングの本にあるスナグルバックの絵はモンスター・ハンターのオマージュ

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引用元:

https://theowlhouse.fandom.com/wiki/The_Intruder/Gallery?file=S01E04_The_Intruder_%2528316%2529.png

 

シュールな魚

キングが手帳に書いていた絵は、ブリューゲルとピーテル・ファン・デル・ヘイデンの版画『大きな魚は小さな魚を食う』に書かれた足つき魚に似ている。

 

魔界ボイリング島のデザインはレメディオス・ヴァーロやヤン・パウエル、ヒエロニムス・ボスといった幻想的で怪奇的な絵を参照にデザインされた。

ソース:https://www.animationscoop.com/interview-creator-dana-terrace-on-disneys-the-owl-house/

ボスと近い時代に活躍した画家のシュールな絵からも着想を得ているかもしれない

 

 

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引用元:https://www.animationscoop.com/interview-creator-dana-terrace-on-disneys-the-owl-house/

 

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引用元:https://www.metmuseum.org/art/collection/search/338694

 

 

ジブリへのリスペクト

イーダが魔獣となった姿は多分ジブリの影響を受けている。『ハウルの動く城』のカラスに化けたハウルのオマージュか。

 

イーダがキングを追いかけるシーンでは『千と千尋の神隠し』でカオナシ湯屋の廊下で千尋を追いかけるシーンを再現している。

 

 

ウィトルウィウス的人体

イーダが匂いを嗅いでいる本はレオナルド・ダ・ヴィンチの素描『ウィトルウィウス的人体』が元ネタ

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/The_Intruder/Gallery?file=S01E04_The_Intruder_%2528420%2529.png

 

 

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引用元:https://www.leonardodavinci.net/images/gallery/the-vitruvian-man.jpg

 

 

アウルハウス 4話 侵入者は誰だ 考察

 

 

アウルハウス4話は今後の伏線となる情報が多い。今回は特にイーダとキングについて掘り下げられている。魔法の仕組みについても明らかにされていて、話が進んだ後に見返すと色々な発見があるかもしれない。

 

1.キングの寂しさ

 愛すべき妖魔キング。外見は骸骨をかぶった子犬みたいで、アヒル模様の靴下と格闘するなど行動も子犬や子猫みたいな愛くるしさがある。甘いお菓子が好きで、ウサギの人形「フランソワ」を家臣として連れ歩く様子はまるで幼い子供。日本語版では一人称「吾輩」と偉そうな態度とのギャップもかわいらしさを加速させている。

 

 キングはかわいいだけじゃなくて謎めいている。力を奪われて今の姿になったとイーダは語っていたが、あの王冠には実際には何の魔力もなかった。そもそもキングがどこで生まれたのか、なぜイーダと一緒にいるのか全く明かされていない。作中では人間じゃない存在も描写されてるけど、キングと同じような形の種族は1人もいない。我々はキングのことを知っているようで知らない。

 

それはルースとイーダも同じだ。2人はキングをかわいがっているけど、真剣に相手にされないと感じさせてしまっていた。わかっているようで相手の気持ちに気づかないことはけっこうある。やっている側は悪気がない分、本人が傷ついていると気づきにくいのがまた厄介。実際にルースも人間界でキングと似たような寂しさを感じていたのに、授業の動画にかわいいスタンプを付けたりと最初の方は真剣に話を聞いてない。

 

家族の中でも年少だったり立場の弱い人や、グループ内のいじられキャラはキングと似たような思いをしているのかもしれない。真剣に向き合って欲しいのに軽くあしらわれてしまったり、お邪魔虫扱いされてしまう。

 

友達がいなくて、誰からも自分の意見や発言を真剣にとらえてもらえない。ルースに妖魔について知ってもらうことで、ようやく自分みたいな者を真摯に受け止めてくれる誰かができると思った。そう言われて初めて、ルースはキングに自分と同じ思いをさせていたとようやく気づいた。

 

2人はお互いの気持ちを理解し合って、最終的には協力してイーダを元に戻せた。でも現実には手遅れになって仲がこじれてしまうことが多々ある。我々もルースとキングのような関係を築けたらいいのかもしれない。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/The_Intruder/Gallery?file=Hugging.png

 

 

2.イーダの呪い

4話ではイーダが呪いにかかっていることが初めて明らかになる。毎日ポーションを飲まないとフクロウの魔物に変身してしまう症状は、薬で症状をコントロールしないといけない慢性疾患や発達障害のメタファだと思った。

 

誰も呪いをかけられたくないけど、正しい方法で体調を管理できる。このイーダの説明は、命への別状は少ないけど日常生活に支障をきたす病気や、ADHDの多動や衝動性など社会生活のハンデとなる症状を服薬や投薬によって抑える対処療法に当てはまる。

 

‘No one likes having a curse, but if you take the right steps, it's manageable.’とイーダが言うように、きちんと薬を飲んで対処すれば生活できる。それでも自ら進んで病気やハンディキャップを抱える人はいない。毎日忘れないように薬を飲んで、常に体調に気を付けるのは決して楽なことではない。特にイーダみたいな保護者の場合は、子供にそれを見せまいとするのもわかる。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/The_Intruder/Gallery?file=S01E04_The_Intruder_%2528264%2529.png

 

 

ルースとキングが薬を飲んだら魔法が使えると考えたように、健康な人が試験で高得点を取るためにコンサータやアデロールを飲むといったことは現実に起きている。でもその薬は本当に必要な人のためにあるもの。そうじゃない人が飲んで成果を出したとしても、体に悪いし根本的な解決にはならない。結局のところ、2話でイーダが言っていたように遠回りでも地味に学んでいくのが一番の近道だ。

 

イーダの呪いには謎が残っている。誰がどうやってかけたのか、いつか解ける日が来るのか。気になることはたくさんあるけど、今はルースとキングも呪いについて説明してもらったから今後は対処できるし、元の姿に戻れたからひとまず安心。

 

 

3.ルースの魔法

これまで魔法修行をがんばってきたルースの努力がようやく実った。ファンタジーには、魔力が先天的な素質で決まる作品が少なくない。『ハリー・ポッター』シリーズにはハーマイオニーみたいに普通の人間出身の魔法使いもいるけど、実はそういう子には先祖に魔力を持たない魔法族がいたりする。他の作品でも貴族だけが魔法を使えたり、才能は生まれつきだったり、なんだかんだ血筋や遺伝子、またはチート能力がものを言う。

 

アウルハウスは魔力の源について斬新な設定を出してきた。魔界の人間は心臓の横についている魔法袋から魔法を使う。魔力が生物由来の設定はあまり見かけたことがない。魔法袋を持っていないルースは、魔界においてハンディキャップを抱えたマイノリティとも解釈できる。

 

それでも魔法を使うのをあきらめきれないルースは、自分にできる別のやり方を見つけて魔法を使えるようになった。魔界の住人が書く魔法円の中には魔法陣がある。それを紙に書いて発動させれば魔法袋がない人間でも魔法が使えるのだ。

 

現実世界の人間にも得意不得意があって、自分ではどうしようもない部分がある。でも何かができないなら、周囲と違った方法でできるようになればいい。それを認めるアウルハウスの魔法は本当の意味で平等で、「もしかしたら自分にもできるかも」と希望を与えてくれる。きっと魔法だけじゃなくて、他のことに挑戦する勇気も与えてくれる。

 

本作は自分に居場所がないと感じている「はみ出し者」にそっと寄り添い、真摯なメッセージと希望を与えてくれる。キングは一体何者なのか、イーダに呪いをかけたのは誰なのか、ルースの魔法修行はどうなるか。魔界とアウルハウスは謎に満ちている。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/The_Intruder/Gallery?file=S01E04_The_Intruder_%2528507%2529.png

 

Netflix アニメ 陰謀論のオシゴト 感想 ~闇の政府機関へようこそ!~

 

 

 

 

目次

 

 

 

あらすじ

 

世界を影から牛耳る闇の政府機関「コグニート社」に勤めるレーガンは、真面目で仕事熱心な科学者。チームリーダー昇進したのはいいが、壊滅的な対人スキルを補うために新人のブレットと二人でチームを率いることになる。

 

仲間たちとすぐに打ち解け、好かれているブレットにレーガンは面白くない。あらゆる手段を使ってブレットをやめさせようとするが……

 

 

 

 

 

見どころ

オカルトネタ満載

政府は陰の組織に操られている!を筆頭に、トカゲ人間やケムトレイルといったオカルトネタがたくさん。他にも下ネタ、薬物中毒ネタ、映画や有名人、サブカルまでこれでもかというほど小ネタが盛り込まれている。

 

ケネディ暗殺やNetflixがフレンズを配信する権利を確保するために1億ドルを払ったエピソードなど、ちょいちょい「これ本当にやったのか」と突っ込みたくなる話が満載。

 

『ムー』の愛読者や『ノストラダムスの大予言』を読んでいたオカルト好きはもちろん、洋画好きや『サウスパーク』など容赦なくジョークを効かせた作品が好きなら確実に楽しめる。

 

キャラクター

優秀だけど性格に難ありのレーガンを筆頭に、一癖二癖ある連中が集結。イケイケの操作・広報部門担当のジジ、軍人気質のイルカ人間グレン、ドラッグ常用時はまとも?なDr.アンドレ、下品なサイキック・キノコのマジック・マイク。普通のいい人のブレットがいなかったら壊滅しそうなカオスっぷり。それなのに、たまにすごくまともだからそのギャップが面白い。特に正反対のレーガンとブレットが仲良くなっていく様子は、バディもの好きにはたまらない

 

物語

本作は『怪奇現象グラビティ・フォールズ』の監督アレックス・ハーシュと脚本も務めたシオン・タケウチが作っているだけあって、ダークな展開とコメディのバランスが絶妙。毎回大笑いしながらも所々で胸をぐっと締め付けられ、感情がジェットコースターのように揺さぶられた。

 

特に5話は神回。古き良き80年代でなつかしさを呼び戻しながらも、今では時代遅れとなった負の側面をとことん皮肉っている。そこに普段は明るいブレットの影がパンチを利かせていた。

 

シーズン1の最後には新たな強敵も立ちはだかり、レーガンたちの苦難はまだまだ続く。続編が今から楽しみでしかたない。

 

個人的な感想

※ネタバレあり

 

 

 

 

 

 

 

 

本作は男女のバディものであり、毒親に苦しめられている大人が親と、そして自らの内面と対峙していく話でもある。優秀で使命感が強いけど対人スキルが駄目なレーガンと、能天気だけどお人好しで心優しいブレット。性格も経歴も真逆のエリート2人は、実は同じような心の傷を抱えていた。2人とも友達がいなくて、毒親によって育てられている。

 

 

レーガンとブレットの過去

 レーガン飛び級の影響で孤独な少女時代を送った。ランドは自分がいい父親だと主張するが、実際には娘の気持ちを踏みにじっている。発明品で幼かったレーガンにトラウマを植え付け、未熟さをあざけって自尊心を奪い続けた。大人になっても娘を公私ともに邪魔にしている。母親のタミコも常に自分の世界にいて、「あなたのためよ」と善意を押し付けるなど、お世辞にもいい保護者とは言えない。

 

 ブレットは名家の落ちこぼれ扱いされていた。両親は優秀な上のきょうだいばかりに目を向け、ブレットを家族写真に写らせない、誕生日に誰も家に帰らないなど末息子を蔑ろにして育ててきた。周囲からも空気のような扱いを受け、ブレットは幼い頃から家族の影で寂しい思いをしてきた。大学生になって親元を離れてからも寮でいじめられている。

 

見えない虐待

レーガンとブレットは2人とも、孤独な子供時代と青年時代を過ごしてきた。そして大人になった今でも、毒親の存在や残された傷に苦しんでいる。お互いに指摘されるまで無自覚だったように、2人が受けた仕打ちは外からは見えない。

 

レーガンの両親は独善的で歪んでいるけど娘への愛はある。飛び級への理解があるなど、生活水準も悪くない。ブレットの家は上流階級で、衣食住と教育にはお金をかけられている。イェール大学の学費も生活費も全額出しているだろう。

 

確かに恵まれない子よりは幸せかもしれない。でも、2人ともしんどさを感じていて、大人になってからも無意識に苦しんでいる。レーガンに至っては心にしまい込んでしまうほどのトラウマを受けていた。

 

この辺りを親にも愛情があると擁護する人もいる中、正当化せずにちゃんと毒親として書ききってくれた所はうれしい。特にランドは愛情を名目に我欲と打算で娘を支配している。それが保護者のエゴであっても愛情は伝わる故に、今でも親や家族に囚われている人はきっと少なくない。

 

 

これからの2人

レーガンとブレットは全く似ていないようで、表面化しづらい痛みを抱えて育ってきた。寂しい幼少期と青年期を過ごした2人は、似た経験があるからこそお互いのそれに気づかせた。孤独だった2人が長所を認め合いながらビジネス・フレンドとして絆を深めていく様子には胸が温まる。

 

物語はまだ終わっていない。2人の心の傷は完全には癒されていないし、レーガンの前にはこれまで以上に前途多難な道が立ちはだかっている。レーガンとブレットはどのように過去と現在に向き合っていくだろうか。決して楽な道ではないけど、仲間がいる今はきっと大丈夫。

アウルハウス 3話 ルースと魔法学校 感想

もくじ

・あらすじ

・登場人物

・感想

・用語解説・小ネタ

 

・あらすじ

 イーダと砂浜にゴミナメクジの死骸拾いに出ていたルースは、魔界に魔法学校があると知る。行ってみたくて仕方ないルースだが、イーダは学校にあまりいい印象を持ってないみたいだ。

 

 砂浜から離れて森にやってきたルースは、同じ年くらいの少女がうっかり踏んでしまった草を魔法で元気にする/魔法を使う姿を見た。その少女ウィローはアボミネーション作り(魔法で作った泥人形)がうまくいかず、優等生のアミティに嫌味を言われていた。

 

 その頃、キングはイーダがルースにちゃんと魔法を教えないなら、自分が先生になると豪語。からかわれて怒ったキングは、どっちがルースの先生になれるか賭けを申し出る。イーダは拾ったゴミナメクジの卵をキングに渡し、1日で忠実な僕に育てたら彼の勝ち。負けたら変なあだ名をつけると言い渡した。

 

 怒ったウィローが出した茨をほめて意気投合したルースは、自分がアボミネーションのふりをして魔法学校に忍び込む代わりに、ウィローが授業でいい点を取れるようにすることに。二人の企みは大成功!ウィローは授業で初めてトップになった。彼女の友達ガスとも仲良くなり、三人で学校を楽しむ。

 

 一方、フーティからルースが魔法学校に行ったことを知らされたイーダ。犬用ビスケットを食べて立派に成長したキングのゴミナメクジに負けを認め、ルースの後を追って魔法学校に行く。

 

 ルースたちが三人で作戦の成功を祝っていると、教室にアミティが校長先生を連れてきた。校長はアミティか人間みたいなアボミネーションをよく調べるため、ルースの解剖を試みようとする。ウィローが最初に刃を入れるように勧められた時、ガスが機転を利かせてくれた。ところが、校長が侵入者を校内に閉じ込める魔法を発動させてしまう。

 

 魔法学校倉庫に隠れていたイーダの元にキングが飛び込んできた。制御不能になったゴミナメクジがキングを食べようとしている。キングは負けを認め、イーダはナメクジを追い払った。

 

 逃げ場を失っていたルースとウィローは、砂浜でイーダにもらった種を成長させて出口を見つける。二人の前に立ちはだかったアミティがアボミネーションを仕掛けてきたが、ウィローは自分を犠牲にしてルース校外へ逃がした。

 

 キングとイーダが大量の塩でゴミナメクジを小さくした所に、ルースが助けを求めてやってきた。後に残した友達が気がかりなルースだったが、ウィローとガスが追いかけてきて、三人は再会を喜ぶ。

 

 学校から出禁にされてしまったが、二人が魔法を教えてくれることになったし、イーダは弟子が初めて指名手配されたことを喜ぶのだった。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/I_Was_a_Teenage_Abomination/Gallery?file=S01E03_I_Was_A_Teenage_Abomination_%2528598%2529.png

 

 

・登場人物

主な登場人物

ルース・ノセダ:人間界から魔界ボイリング島にやってきた。イーダの元で修行を続ける

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/I_Was_a_Teenage_Abomination/Gallery?file=S01E03_I_Was_A_Teenage_Abomination_%252849%2529.png

 

 

イーダ・クロウソーン:自称「ボイリング島でいちばん強力な魔女」。学校はあまり好きではないらしい

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/I_Was_a_Teenage_Abomination/Gallery?file=S01E03_I_Was_A_Teenage_Abomination_%252857%2529.png

 

キング:ルースとイーダと同居する妖魔。今回はゴミナメクジを手名付けようとするが……

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/I_Was_a_Teenage_Abomination/Gallery?file=S01E03_I_Was_A_Teenage_Abomination_%252870%2529.png

 

 

フーティ:アウルハウスを守る妖魔。今回は無限に伸びる体は使わない

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/I_Was_a_Teenage_Abomination/Gallery?file=S01E03_I_Was_A_Teenage_Abomination_%2528364%2529.png

 

 

新キャラ

ウィロー・パーク:アボミネーションの授業を受けさせられているけど、本当は植物の魔法が得意な優しい少女。ルースと気が合って仲良くなる

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/I_Was_a_Teenage_Abomination/Gallery?file=S01E03_I_Was_A_Teenage_Abomination_-_6.png

 

 

 

ガス(本名オーガスタス)・ポーター飛び級生。人間に興味津々で、「人間鑑賞クラブ」の部長も担当している。ルースに着けてもらったあだ名に大喜び

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/I_Was_a_Teenage_Abomination/Gallery?file=S01E03_I_Was_A_Teenage_Abomination_-_14a.jpg

 

 

アミティ・ブライト:嫌味な優等生。アボミネーションが得意だが、ルースの作戦でウィローにトップの立場を奪われてしまう

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/I_Was_a_Teenage_Abomination/Gallery?file=S01E03_I_Was_A_Teenage_Abomination_-_18d.png

 

 

バンプ先生:アボミネーションの授業担当。背がとても低く、アボミネーションに持ち上げてもらって授業をしている。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/I_Was_a_Teenage_Abomination/Gallery?file=S01E03_I_Was_A_Teenage_Abomination_%2528311%2529.png

 

 

校長先生:ヘキサイド魔法学校の学校長

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/I_Was_a_Teenage_Abomination/Gallery?file=S01E03_I_Was_A_Teenage_Abomination_-_22a.png

 

 

感想

 今回は魔法学校もの。ヘキサイドがよくある古風な全寮制学校ではなくて、現代的なのが新鮮。ロッカーが大口を開けて本を出してくれて、始業ベルが叫び声をあげるなど、アメリカの学校でおなじみのものが魔界仕様になっている。

 

 なかなかいい場所みたいだけど、学校は生徒を型にはめる場所でもある。確かに型破りなイーダみたいに、合わない人にはとことん合わない。学びにも多様性が認められる今、そういう考え方の人が作品に登場するのも大事かもしれない。

 

 あと、魔法学校に侵入した方法はちょっとどうかと。学校に行きたい、嫌味な子に仕返ししたい気持ちはわかる。だからといって、自分の欲のために成果を横取りするのはよくないと思う。ズルをした人にトップの座を奪われて、本当のことを先生に言っても信じてもらえないアミティが気の毒になった。

 

 学校でのドタバタの傍らで進むキングのゴミナメクジ育成計画。プリンスジュニアと名付けるセンスや、犬用ビスケットを食べるだけでなついていると勘違いする詰めの甘さがかわいい。負けず嫌いだったり、威張っていても最後はイーダに助けを求める所は年の離れた弟みたいだ。ルースとイーダがちょっかいを出したりかわいがるのも納得。  

 こういう風に2つのストーリーに分岐した上で最後に1つにまとめる方法は、緩急やコメディとシリアスのバランスが取れると思う。

 

 ひとまずルースはアウルハウスで勉強することになったけど、また学校に行きたいと言い出した時にイーダはどうするのか。世界は広がって仲間も増えて、ルースの異世界滞在はもっと楽しくなりそう。

 

・小ネタ・用語解説

英語版のタイトル

’ I Was a Teenage Abomination’は、1957年に発表されたホラー映画 ‘I Was a Teenage Werewolf’と’I Was a Teenage Frankenstein’が元ネタ

 

ゴミナメクジ

巨大なナメクジ型の怪物。文字通り色々な物を食べて成長するため、その死骸はイーダにとって宝の山

 

アボミネーション

動く魔法の泥人形のようなもの。うまく作られたものは主人の命令通りに動く

 

ヘキサイド魔法学校

魔界の幼稚園から高校まである通学制の一貫校。制服は男女ともに濃いグレーの短いフード、チュニック、ベルト、ブーツと中世ヨーロッパっぽい服を現代的にしたデザイン。専攻ごとにインナーとレギンスの色が変わる。飛び級や勉強する分野の変更が許可されているなど融通が利き、典型的な人ではない生徒、ハンディキャップを持つ先生がいたりと多様性も認められている様子

 

キングがイーダにかぶらせた帽子

Dunce cap (低能帽)。昔のアメリカでは、行いや成績が悪い子に罰として’DUNCE’(のろま、覚えが悪い、劣等生)と書かれた紙製の円錐型の帽子をかぶらせ、教室のすみに立たせていた。本作のは‘SHAME’(恥)と、言葉を選んでいる

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/I_Was_a_Teenage_Abomination/Gallery?file=S01E03_I_Was_A_Teenage_Abomination_%2528424%2529.png

 

 

魔法学校もののお約束

人間(または人間界にいた魔法使い)、初めて仲良くなる親友、嫌味な優等生の構図は、ハリーポッターと賢者の石、リトルウィッチアカデミア、ミルドレッドの魔女学校(2017年版のドラマ)にも見られる

アウルハウス 2話 「魔法使いの試練」 感想

目次

・あらすじ

・登場人物

・感想

・用語解説・小ネタ

 

  • あらすじ

魔女修行をやる気満々のルース、でも任されたのはキングと一緒にイーダの客に荷物を届け、作った魔法薬を売り歩く地味な仕事だった。がっかりしたルースが最後の届け先に行くと、見た目は普通の家なのに中には豪邸が広がっている。いかにも魔法使いらしい家の主、アダガストに温かく出迎えられて三人でお茶をすることになった。

 

自分は何か特別な意味があって魔界に来たはずなのに、雑用しかやらせてもらえない。ルースの悩みを聞いたアダガスは地図を見せてくれた。選ばれし者が杖を引き抜いた時、この世界は古くから存在する闇から救われる。ルースは喜んでクエストを受けたが、キングとイーダに笑われてしまう。がっかりするルースだが、太陽に照らされて地図に光る文字が浮かび上がるのを見て決意を固めた。

 

 先ほどの話に嫌な予感がするイーダ。フーティにルースの行き先を聞いて、急いでキングを連れて魔法使いの家を探す。豪奢な家があったはずの廃墟の床には、ルースが持っていたのと同じ地図が何枚も落ちていた。

 

 そのころ、ルースは意気揚々と冒険を進めていた。霧の向こうのかわいいネコたちが暮らす町に付き、仲間を増やし、順調に旅を進めてアイテムをもらっていく。ところが後を追ってイーダとキングがたどり着くと、町は荒れ果てていた。

 

一方ルースの冒険は終盤へ。泉に向かうと、中央の台座には光り輝く杖が!水面に石の橋が浮かび上がっていくのを見て、魔界に来たのは意味があったとルースは喜ぶ。橋を渡って杖を台座から引き抜いたが、杖は溶け去り、アダガストが姿を現した。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Witches_Before_Wizards/Gallery?file=S01E02_Witches_Before_Wizards_%2528256%2529.png

 

 

 全ては彼がイーダを誘うために仕組んだ罠。魔法使いも旅の仲間も全て人形で、オオダコ型の妖魔の本人が操っていたのだ。冒険でもらった装身具にルースが拘束された所へ、イーダとキングが助けにきた。

 

触手に囚われてしまった二人を助けるために戦うルース。アダガスは旅の仲間の幻影を見せるが、ルースはそれを振り切ってアダガスに勝つ。小さなタコになったアダガスは、イーダに一飲みにされてしまった。

 

 意気消沈したルースを、イーダは目隠しして空に連れて行った。そこから見えるのはボイリング島の絶景。近くで見たら臭くてぬめぬめした場所も、別の所から見ると、とても違って見える。なんで魔法使いの企みを見抜けたのかと尋ねられ、「みんな選ばれし者を夢見るけど、予言を待つより自分で行動した方がいい」とイーダは答えるのだった。

 

  • 主な登場人物

ルース・ノセダ:ファンタジーをこよなく愛する14歳。イーダの元で魔女修行中

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Witches_Before_Wizards/Gallery?file=S01E02_Witches_Before_Wizards_%2528131%2529.png

 

イーダ:自称「ボイリング島でいちばん強力な魔女」。妖魔のフーティとキングと街はずれにある「アウルハウス」で暮らしている。人間界から拾ってきたガラクタを売る他に、自分で調合した薬を売っている

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Witches_Before_Wizards/Gallery?file=S01E02_-_12a.jpg

 

キング:誇り高く振る舞う妖魔。かわいいと言われたら怒るけどやっぱりかわいい。甘い物が好き

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Witches_Before_Wizards/Gallery?file=S01E02_Witches_Before_Wizards_%2528167%2529.png

 

フーティ:ドアで見張りをしている妖魔。1話から登場するが、この回から物語の展開に関わり始める。無限に伸びる体でルースたちにからむ

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/A_Lying_Witch_and_a_Warden/Gallery?file=The_Owl_House_S01E01_-_A_Lying_Witch_and_a_Warden_271.png

 

アダガスト:典型的な魔法使い。ルースに選ばれし者としてクエストを紹介するが……

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Witches_Before_Wizards/Gallery?file=Gibberish_Books1.png

 

その他:村の住人たち、剣士ネヴァレス、ネコ型種族のクリス、妖精のお姫さま。ルースの旅の仲間たちだが、正体はアダガストに操られた人形

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Witches_Before_Wizards/Gallery?file=Imagination.png

 

  • 感想

 ファンタジーの王道をこれでもかと入れつつ、ラダガストの正体や特別な使命も意味もない異世界召喚など、ひねりをうまく利かせている。「魔法使いの弟子」でおなじみの修行が嫌になった弟子が騒動を起こす話と、選ばれし者として冒険に出るクエストもの。そこに剣を持つヒロインから純粋な主人公を利用する邪悪な魔法使いまで、古今東西のファンタジーネタが盛りだくさん。あの偽の冒険が平和なテーマパークでやってるなら自分も参加したい。

 

 異世界に来たのには特別な理由があるはず、と思うルースの気持ちはすごくわかる。ファンタジーのお約束でもあるし、そのジャンルが大好きな人の多くが一度は夢見る。

 

それにルースは明るく振る舞っているけど、本当は現実世界で自分の行動を理解されないことに傷ついていた。異世界に憧れを抱くことで、居場所がない辛さに耐える子は少なくない。疎まれていた主人公が別の場所で選ばれし者となり、活躍する作品は『ハリー・ポッター』シリーズを筆頭にたくさんある。自分だっていつかきっと、と夢を抱くのも無理はない。

 

 でも現実はそう簡単にはいかない。何かの成果を出すには地道な努力が必要だし、結局はそれが一番の近道になる。この手の話は教訓めいた作品も多い中、お説教臭くなくて不気味で楽しいのがアウルハウスの魅力。イーダはなんだかんだいい師匠だし、次回から修行も進みそうだ。

 

  • 用語解説・小ネタ・オマージュ

小ネタ

・オープニングが流れたのはこの回が初めて

 

・イーダがヘビ油を売っているのは、"snake oil salesman(woman)"(インチキなセールスマンの意味)をネタにしている

 

・ルースが旅をしている時、岩に刻まれている文字は"W-I-C-H-I-Z"と解読できるそうだ。"W-I-C-H-I-Z"→” Witches”(魔女たち)と読める

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Witches_Before_Wizards/Gallery?file=S1_E2_Witches_Before_Wizards_Code.png

 

・イーダがアップルブラッドを飲む時に使っているマグカップに、"30 & Flirty"と書かれている。イーダの年齢は30歳かお酒を飲んでいると示唆している

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Witches_Before_Wizards/Gallery?file=Apple_Blood_1.png

 

 

情報引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Witches_Before_Wizards

 

 

オマージュ

・イーダが杖を呼ぶシーンは、『マイティ・ソー  バトルロイヤル』でソーがドクター・ストレンジのサンクトム・サンクトラム内で傘に変化したムジョルニアを呼ぶ場面と似ている

 

・’By the power of Skullgar, I am out of battery’:ルースが冒険に持って行った剣は、海外アニメ’He-Man’のオマージュ。変身する時の台詞"By the power of Grayskull"「グレイスカルの力によって、わが手にパワーを」に似た言葉を言う

 

・ネヴァレスが戦場で花咲く恋についてルースに尋ねているのは、メタルギアシリーズのハル・エメリッヒ、通称オタコンがスネークに「君に確認したいんだ 戦場でも愛は芽生えるかどうか?」と尋ねた台詞のオマージュ

 

・ネヴァレスのマントはフランチャイズ版のダンブルドアが着ているものに似ている

引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/Witches_Before_Wizards

 

・The Chosen One: ハリー・ポッターこと「選ばれし者」

 

アウルハウス 1話 考察 変わり者であってはいけないのか?

注:本編のネタバレあり

目次

1. 個性を否定されているルース

2. 多様性を尊重するイーダと尊重しない番人

2.1 お尋ね者と社会規範の守り人

2.2 多様性を許容する人と拒絶する人

3. 自分と相手の個性を認めるルース

4. 変わり者でいいじゃないか

 

 ディズニー・チャンネルで放送されているアニメ『アウルハウス』は、普通の少女が異世界に行って魔法を勉強する王道のファンタジー。ちょっと不気味でユーモラスな魔法の世界の中にとても現代的なメッセージが込められている。

 第1話では、問題行動を直すためにサマーキャンプに行くことになったルースが、魔界ボイリング島に足を踏み入れる。魔女イーダと仲間たちや塔の番人との出会いを通じて、ルースは自分のロールモデルと生き方を見つける。人と違うのはいけないことか。個性を抑圧して周囲に合わせないといけないのか。冒険を通じてルースは答えを見つける。

 

1. 個性を否定されているルース

 ルースはとても個性的な子。自分の世界を持っていて、好きなものがはっきりしている。本物のヘビや花火を使ったリアル志向なプレゼンテーションをやろうとする、劇でお腹を切られたら腸に見立てたソーセージが出る仕掛けを仕込む、はく製を使って生きた蜘蛛を吐き出すグリフィンを作る。芸術は爆発だ!と言わんばかりにクリエイティブだ。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/A_Lying_Witch_and_a_Warden/Gallery?file=The_Owl_House_S01E01_-_A_Lying_Witch_and_a_Warden_32.png

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/A_Lying_Witch_and_a_Warden/Gallery?file=The_Owl_House_S01E01_-_A_Lying_Witch_and_a_Warden_38.png

 

 残念ながらルースの長所は周囲に理解されていない。変わり者扱いされて友達はいない。親と先生からも個性伸ばすのではなく、「普通」になるように求められている。プレゼン用のヘビが校長先生にかみついたのをきっかけに’Think Inside The Box’(型にはまって考える)ことを教えるキャンプに行かされることになってしまった。

 

 確かにルースの行動には問題がない訳ではない。同級生たちをパニックに陥れることで、人に迷惑をかけている。迷惑な行為をやめさせて常識的なふるまいを教えるのが、大人としての責任かもしれない。

 

 でも本当にそれが正しいのだろうか。子供の行動を欠点とみなしてやめさせるのではなくて、どうすれば長所として伸ばせるかに視点を向ければいいのに。よかれと思って矯正することで、いい所も一緒に潰してしまうんじゃないだろうか。

 

 現にルースは大好きなお母さんの言葉で、ほんの一瞬とはいえ愛してやまないファンタジー小説をゴミ箱に入れてしまう。そうやって社会に溶け込むのと引き換えに、すばらしい長所を捨てざるを得なかった子供たちはきっと少なくない。

 

 現実の世界は多様性が大切だと言いながら、多数派が認めない個性は消されてしまう。人間界でルースは自分らしくいることを許されない。

 

2. 多様性を尊重するイーダと尊重しない番人

 自分のファンタジー小説を取っていったフクロウを追いかけて、ルースは魔界のボイリング島に足を踏み入れる。そこで魔女イーダと妖魔のフーティとキング、そして塔の番人に出会う。イーダと番人は同じ魔界の住人でも正反対の大人。対照的な二人は物語の対立構造「個性を尊重するか抑圧するか」を体現している。二人と接することで、ルースの行く先は大きく変わっていく。

 

2-1. お尋ね者と社会規範の守り人

 イーダは自称「ボイリング島でいちばん強力な魔女」。人間界で拾ったガラクタや自分で調合した薬を売っている。窃盗罪や違法な魔法を使ったことその他諸々の理由から指名手配されていて、追手や元カレを避けるために町はずれにある「アウルハウス」に妖魔のキングとフーティと暮らす。

 

 社会規範に従わないアウトローで、恐らく収入も安定していない。それどころか指名手配までされている。社会のルールから逸脱した存在のイーダは、「良識的」な大人が子供に関わらせたくない存在かもしれない。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/A_Lying_Witch_and_a_Warden/Gallery?file=The_Owl_House_S01E01_-_Eda_Standing_on_Table.jpg

 

 塔の番人は文字通り、魔界にある塔の番人。思想や嗜好が普通ではないと判断した住人達を容赦なく逮捕し、塔の牢屋に閉じ込めている。指名手配されているイーダを追っているが、一度も捕まえられたことがない。

 

 イーダとは対照的に、番人は社会規範を守る存在。指名手配者を追う警察みたいな役割も果たして、部下の信用も厚い。安定した地位の仕事に就いて一般社会に溶け込んでいる。ルールや常識をきちんと守る大人で、子供たちの手本にされるのは彼のようなタイプだろう。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/A_Lying_Witch_and_a_Warden/Gallery?file=The_Owl_House_S01E01_-_A_Lying_Witch_and_a_Warden_190.png

 

2-2 . 多様性を許容する人と否定する人

 性別や社会的地位が異なる二人は、自分と考え方が異なる人への態度も大きく異なる。

 イーダは様々な個性や価値観の人々を受け入れて、相手が大切にしているものを尊重している。

 妖魔キングの王冠を取り返す代わりに人間界に戻すと約束されたルースは、イーダとキングと一緒に番人が管理している塔に侵入する。危険を冒して取り戻したキングの宝物は、人間界のファーストフード店でもらえる紙の王冠だった。

 「この王冠は何も力を与えないでしょ」と困惑するルースの意見を認めた上で、イーダは語る。

 「ほら、キングもあたしも居場所がないし、仲間はお互いしかいない。だからだからあいつにとってあの馬鹿げた王冠が大切なら、あたしにとってもそうさ。それに、あたしたちみたいな変わり者はお互いに協力しないと」

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/A_Lying_Witch_and_a_Warden/Gallery?file=Sg2p7O2NEyU.jpg

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/A_Lying_Witch_and_a_Warden/Gallery?file=Sg2p7O2NEyU.jpg

 

 イーダは人間その他の生き物が異なる個性を持つのを、まぁこんな奴がいてもいいかと受け入れている。そして一人ひとりが違うからこそ協力できることは協力する。彼女は真の意味で、多様性を許容し尊重する魔女だ。

 

 それに対して塔の番人は、異なる価値観の人を受け入れようとしない。食材同士のssを書く、再生する自分の目玉を食べる、陰謀論を信じる、といった変わり者の住民たちを、社会の多数派と価値観が違うというだけで捕らえて塔の牢屋に投獄している。自分が受け入れられない人を拒絶するだけではなく、彼らを従わせるためには手段を選ばない。

 

 イーダの売っていたテレビを壊したり、直接的な描写はないけど、自分に反抗した囚人に暴力を振ったことを伺わせる描写がある。キングの王冠を取り上げて目の前でぐしゃりと潰すなど、力ずくで相手を従わせていた。

 

 「これはお前ら全員への見せしめだ。社会に溶け込めなければお前たちに居場所はない」と囚人たちを脅す言葉から、マジョリティに合わせようとしない人たちの存在を許容しない姿勢がはっきりと伝わってくる。

 

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引用元: https://theowlhouse.fandom.com/wiki/A_Lying_Witch_and_a_Warden/Gallery?file=VUcLAwTPD-U.jpg

 

 塔の番人は自分とは価値観が違う人たちの存在を否定する。彼らを問題視して、力ずくで自分が正しいと信じるマジョリティの側の価値観に従わせようとしている。彼は多様性を否定し、異なる考え方の者がいること自体を受け入れていない。

 

 社会のはぐれ者であるが故に多様性を受け入れて尊重するイーダと、社会の規律を遵守するからこそ多様性を退ける塔の番人。二人の対比は人がそれぞれ異なることを前提に協力し合う現代の理想の生き方と、集団や共同体の中で定められた「常識」に合わせるのを要求される従来の生き方の対立を表している。同時に、自分らしさを大事にするか個性を抑えるか、二つの間で迷うルースの分岐点でもある。そしてイーダと出会うことでルースは自分の道を見つける。

 

3. 自分と相手の個性を認めるルース

 人間界のルースにはお手本にできる人がいなかった。現実世界の大人たちは悪い人たちではないけど、決して理解者であったとは思えない。

 お母さんはルースに惜しみなく愛情を注いでいるけど感性が多数派寄りの人。ユニークな娘が孤立するより、社会に溶け込んで友達を作ってほしいと願っている。学校の先生はルースの問題行動をやめさせることだけに焦点を置いている。人間界の大人たちは彼女を愛しているけど、本当の意味では理解していない。ルースはどんな人を目指せばいいかわからず、ただ大人に従うことしかできなかった。

 

 イーダと出会いによって、ルースは初めてロールモデルにできる人に出会った。イーダは彼女が今まで接した経験がないタイプの大人の女性だった。型破りなお尋ね者で、自分がやりたいように生きている。でも様々な価値観や個性の人と生き物の存在を認め、仲間が好きな物も大事にする。彼女の言動に触れることによってルースはどんな人になりたいか決めた。それは自分の個性も相手の個性も大切にして、お互いに協力し合う人。

 

 ルースは「普通」になって社会の多数派に合わせるのではなく、自分らしくいることで他の人たちを勇気づけて協力し合えると気づいた。だから逃げる意欲を奪われた囚人たちを助けて奮い立たせ、みんなでイーダとキングのピンチを救ったのだ。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/A_Lying_Witch_and_a_Warden/Gallery?file=Bunch_Of_Giraffes.jpg

 

4. 変わり者でいいじゃないか

 約束通り人間界に返してもらえることになったルースは、自分の意志でイーダを師匠に選んで魔界に残ることを選ぶ。個性を否定されていた少女は、自他の個性を受け入れる大人に出会うこと自分の生き方を見つけた。そして社会の鋳型にはめられる場所ではなく、変わり者の自分が生き生きと暮らせる環境を選ぶ決断をした。

 

 私たちは多かれ少なかれ、他の人と変わっている。人と違う価値観を持っていることでいじめられるなど辛い思いをするかもしれない。でもルースが言うように、人と違った物の見方ができるからこそ、私たちは素晴らしい。現実には自分に合った場所を見つけるのは簡単ではない。でもあきらめずに探し続けたら、いつか受け入れられる人や場所に出会えるかもしれない。世界のどこかに居場所がきっとあるはず。

 

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引用元:https://theowlhouse.fandom.com/wiki/A_Lying_Witch_and_a_Warden/Gallery?file=Hugs4.jpg